「骨だけになると顔の美醜も個性も無い。それでも、ここの住人達には個性みたいなものが時間と共に増えてくるらしい。ここは、人類が夢にまで見ながら、為し得なかった自由と平等があるのかもしれん。悩みも苦しみも無い代わりに、喜びも無いようだな。有るのは、生きてた頃に、ああすれば、こうすれば良かったという後悔ばかり。
あーあ、もっと生きているという実感に浸って感動しておけば良かった。生きとし生けるものの何とすばらしかったことか。色んな音色や香、そして色、肌触り、風や水、そして、何よりあの輝く太陽。・・・記憶は少しずつ消えていくような気がする。それなのに、今は、積み重なって流れる時間というものが無い。むなしいはずなのに、その思いさえ無い。何も無い・・・」
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