042-1幻
今日は春分、ぼた餅を食べる日らしい。春のお彼岸は、牡丹の花にちなんで「ぼた餅」。秋のお彼岸は、萩に因んで「おはぎ」。確実な根拠は無いらしいが、いかにも日本的な使い分けである。ぼた餅を食べると牡丹の花を思い出す。牡丹の花には、忘れられない思い出がある。まだ、京都芸大に通っていた頃、日本画科に所属していたので、前期の課題で牡丹の写生があった。先生から推薦されていた場所へ、車で写生に行こうとしたが、道に迷ったあげくに、ダンプカーと衝突して大けがをした。ダッシュボードで額を打って裂傷。シートベルトで肩から胸にかけて、摩擦によるケガ。崖側に挟まれて左足捻挫と打撲。それから鞭打ち症。1ヶ月ほど休学。それでも、自宅で、切り花の牡丹を写生していた。で、暇をもてあましていたその時、ビラビラの牡丹の花と、ぼた餅の何が似ているのかなとつくづく考えた。そして、ぼた餅と牡丹の花との共通点は、牡丹の花が開きかけたボールの形だという発見をして悦に入ったものである。こんな当たり前のことに、気がつかなかったことの方が余程驚きであるが。それよりも、もっと驚きがあった。事故を起こした場所の地名が、京都府綴喜郡打田(つづきぐんうった→頭突き、打った)とは。
顔がもの凄く腫れたのとY字型に額を縫ったことで、お岩さんとフランケンシュタインとの合いの子のような面相になって、鏡を初めて見たときは思わず泣いてしまった。今では、そのキズ後も薄くなって注意してみないと解らなくなった。只、その後、首と足の後遺症に悩まされた。兎に角、その春以降、牡丹の写生には一度も行っていない。しかし、牡丹の花の写生だけは、その年だけで一生分あるので困ることは無い。因みに、ぼた餅だけは、毎年食べる。お彼岸であろうと無かろうと。