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黒百合の咲く季節になってきた。小学生だった頃、初めて「黒百合」という言葉を聞いた。その時の黒百合のイメージは、普通に見られる白いテッポウユリの色が真っ黒に代わった花ということであった。しかし、何十年も経って、実際に見た黒百合に愕然とした。何と貧弱な、そして、真っ黒でもない焦げ茶と濃い紫色の混ざった鉄さびのような色の花。香りも変。鉢植えの黒百合を買って帰って毎日見ていると、不思議なことに、この奇妙な花こそ黒百合の花だと思えてきた。絵に描いてみたところ、様になる。ネットで検索してみると、黒百合は、ユリ(リリウム属)とは違う植物(フリチラリア属)である。北海道の低地に咲く丈の高いエゾクロユリと、本州や北海道の高地に咲く丈の低いミヤマクロユリとがあり、私が買ったものは、後者であったと思われる。

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ラジオから流れる歌で初めて黒百合という言葉を知ったのであるが、この「黒百合の歌」が、映画「君の名は」の主題歌であったと今初めて知った。
戦後まもなく放映された「君の名は」というドラマが始まると、銭湯の女風呂がからになると言うほどの大ヒットメロドラマだったそうで、その後も深夜に再放送されて私も見ることになったが、さほどの感激もなかったように思う。只、大学の親友が、片思いの余りノイローゼになって、この「黒百合の歌」を唄って、はらはら泣いていたのが印象深かった。その後、彼女は心を病んで入院し、休学してしまった。百合の花は、私の中では、この時の経験と結びついて離れない。そういう意味では、黒百合は叶わぬ恋の花のように思える。そもそも、恋というもの自体が、狂気をはらんでいる。確かに、黒百合の花をじっと見ていると、なにやらブラックホールに吸い込まれて行く様な恐怖を感じる。一度捉えられたら逃れるすべがない恋の花、魔物の花、黒百合の花。

「黒百合の歌」  作詞:菊田一夫、作曲:古関裕而、唄:織井茂子

1 黒百合は 恋の花
愛する人に 捧げれば
二人はいつかは 結びつく
あああ……あああ……
この花ニシパに あげようか
あたしはニシパが 大好きさ

2 黒百合は 魔物だよ
花の香りが しみついて
結んだ二人は 離れない
あああ……あああ……
あたしが死んだら ニシパもね
あたしはニシパが 大好きさ

黒百合は 毒の花
アイヌの神の タブーだよ
やがてはあたしも 死ぬんだよ
あああ……あああ……