P2300491
京都でよく見かける扇である。これは、すべてシルクスクリーンで刷られた大量生産の扇である。
金箔地(本金ではなく、アルミに着色した箔である。)は、一見すると「もみ箔」のように見える。

P2300493
しかしこれは「もみ箔」ではない。2枚の扇の端を重ねて写したものであるが、金地の模様が全く同じである。その上、もみ箔独特の風合いもない。

P2300492
この写真は、扇の天の部分を写したものである。箔の部分より紙地の方が多い。

P2300490
本来のもみ箔でもなく、真綿で抜いたもみ箔でもない何か別の模様でしかない。

P2300488
このような「もみ箔風」の模様のシルクスクリーンで、箔糊を扇の地紙に引き、蒸着箔を機械で転写する。簡単にいえば、印刷である。

P2300489
近頃では、ほとんどの量産品は、印刷である。職人の手作業のものは、工芸品である。

京都の扇職人は、工程のひとつずつに分断されているので、一人で完成品を作ることは出来ない。問屋や店屋の真似事をするのは難しい。京都に比較して東京の扇職人はすべての工程を一人でこなすので、店を構えやすい。

朝から晩までラジオを聞きながら、一人で絹扇の折だけをしている職人さんを知っているが、生活は決して豊かではなかった。それに引き換え、店を構える扇問屋は金持ちそうに見えた。

P2300315
これが、「洗練されたもみ箔」である。こんな鮮やかな手作業は近い将来、もう見ることはできなくなるかと思うと切ない。せめてこの技法の映像ぐらいは残さなければならないのかもしれない。