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今日は禁煙の日だそうである。

長い間吸っていたタバコをやめたのは、夫が癌になった時でであった。煙草の代替え品となったのが、おみやげに貰って溜まっていた香水であった。ひっ変えとっかえ、煙草が吸いたくなると、クンクン。犬みたいであった。しかし、おかげで苦も無く止めることが出来た。香水、ハーブ、香道、練香、調香と香りのものはなんでもやってみた。煙草が遠くに霞んでいった。

そして夫を見送ったその日からまた喫煙し始めたが、一日1~3本ぐらいであった。朝起きてからいつまで吸わずにいられるかと、ミニ禁煙を実施。これは実にうまくいく。一箱20本の煙草が一週間以上も持つ。経済的でもある。まあ、5年もやめていたのだから、こんなものかもしれない。

5年前、夫のがん告知のその日に、家中の灰皿、ライター、煙草を捨てたのを覚えている。更に、煙草と相性のいいコーヒー、お酒も捨てた。夫は余命一週間位であると知ったが、私は、統計なんか信じない。こんな元気な夫が死ぬはずないと思った。さすが、夫には余命一週間とはいえず、数ヶ月ぐらいと言っておいた。塩分と動物性脂肪、砂糖をやめ、玄米食に。一日3000歩の散歩。早寝早起き。声を出しで笑える生活。もう大変。ストレス満杯で笑えた。この食事は家中でしなければ本人は辛い。付き合う家族の思いが夫を支えた。まあ、夫の目を盗んで、子供を連れて、マクドナルドへ駆け込んだ日もあったが、たまであった。一ヶ月半後、胸から首まで覆っていた縦隔腺癌は小さくなり始め、1月4日には声が出始めたのである。早速、抗癌治療が始まり、4ヶ月後退院となった。ところが意思の弱い夫は、私に隠れてタバコを吸いお酒を飲み挙句はコーヒーも飲んでいたらしい。外出から帰る夫の身体検査を毎日していて、情けなくなったものである。あなた任せ他人任せのノー天気の夫。完治と医者から告げられたその日に、家にも電話をかけず、友達とそのまま飲み屋に行って酔っ払って、阪急電車のホームから転げ落ちて頭を数針縫った夫。私はインフルエンザで光熱を出していたので速く帰って来てほしいと頼んでいた。病院から、「奥さんとご一緒なんですが、保険証を持ってきていただけませんか。お家の方でしょう?貴女はどなたです?・・・・」 もちろん、私は答えました、「妻です。」 相手は、「失礼いたしました。」 電話がカチャン。熱も高いし夢かと思った。直後に返ってきた息子がカンカンになって、保険証を持って飛び出した。

それ以後、私はほとんど夫と顔を合わさないように暮らした。夫は5年生きた。私の禁煙もその時終わった。今吸ってる煙草は、夫へのお線香みたいなものかな。恨みかな。その煙草も先月を最後にやめた。