P2390378
書庫を整理していたら、懐かしいゴッホの画集が出てきた。外箱があまりに汚くなっていたのでフィルムを取り除いてキッチンペーパーで吹いたら綺麗になった。1966年、河出書房から出版されている。定価490円。高校生の頃に近くの本屋さんで買った。その衝撃は大きかった。
高校から帰ると、おやつを食べながら、ゴッホの画集を見るのが楽しみであった。

P2390380
ゴッホといえば、ひまわりの絵が有名だが、私が衝撃を受けたのは、この「星の夜」である。

ゴッホ37歳の作品。サン・レミの精神を病んだ入院時代の作品である。デフォルメではなく自分が実際に見た幻覚を忠実にゴッホ独特のタッチで素早く描き上げている。私が大学生になった時、親友のWが、精神を病んで必死で私に説明した情景は、まさにこのゴッホの「星の夜」の情景であった。彼女も又、片思いから始まった失恋が引き金となった。ゴッホは絵画に、Wは理論物理学にのめり込んでいった。気性の激しさと恐ろしいほどの集中力。並の人間のボーダーラインを超えていた。苦しみも悲しみも想像を絶するものがあったであろう。ゴッホは優れた絵描きであった故に、私達にその幻覚の世界を見せてくれた。

P2390381
「青い空の下の麦畑」と題されたこの絵の寂寞さは、見ていても吸い込まれそうで怖かった。
この風景が夢にまで現れたことがあり、一時見るのを辞めたほどであった。

P2390382
「烏のいる麦畑」は、かなり一気呵成に描かれたようであるだけに、ゴッホ精神状態が生で表現されている。これらの絵は、自分の心を表現するためにだけ創られた。描かずにおられなかったゴッホの衝動が伝わってくる。こういうのを本当に自己表現というの言うのだろう。

真の天才というものがあるとすれば、その生きた時代の断面をもの見事に表現し世界の常識を打ち破って新たな世界を人類に提示した人とでも言えるのでないか。同じ頃、ウィーンにあってジークムント・フロイトは、精神分析学に新しい理論を築きつつあった。

20世紀に多大なる影響を与えたの3天才と言われるフロイト、マルクス、アインシュタイン。私見ではあるが、ゴッホの絵画を見るにつけて、この3人の精神世界を期せずして表現した画家ではなかったかと思う。ゴッホ自身は、20世紀を待たずこの世を去ったが、その精神世界は、20世紀以降も生き続けたと信じる。

ゴッホの最後の言葉、「人間の悲しみはけっして終わらない。」