本格的学術書?「鼻行類」(ハラルト・シュテュンプケ著 平凡社ライブラリ‐)に直木賞を!
息子に推薦されて読んだ本「鼻行類」。装丁もマーブリング模様で気に入った。
副タイトル「新しく発見された哺乳類の構造と生活」を読んで、ここまでは「ふーうん」という感じ。
その下の一文、「1941年、日本軍収容所から脱走した一人の捕虜が漂着したハイアイアイ群島。そこでは鼻で歩く一群の哺乳類―鼻行類が独自の進化を遂げていた___。多くの動物学者に衝撃を与え、世間を騒がせた驚くべき鼻行類の観察記録。」・・・・・を読んで、「なに、ナニ、なんと!」という気分に。
何より、表紙のこのイラストを見て、鼻行類という文字と瞬時に結びつかないではないか。
せめてこの図を表紙に使ってほしかったなあ。
目次を読んで、これはきっと退屈な専門書か学術書に違いないと覚悟を決めて読み始めた。
まず、ハイアイアイ島についての説明。この島は、南太平洋にあったらしいが、残念なことに1957年某国の秘密地下核実験によりあらゆる生物とすべての研究資料もろとも海底に没してしまった。ヨーロッパ大陸に残された記録も、紙の記録であったため大半は散逸して現存するものは少ない。
ムカシハナアルキ(Archirrhinidae)は、唯一の現生種で、鼻器は未だ分化していない。
コウラ マキガイハナアルキ(Rhinolimacius conchicauda)は、鼻で移動する。学名の日本語訳はさぞかし大変であったと思われる。
ネット上には日本語名だけから、ウソっぽいと断言する輩が大勢いるようである。
写真がないとはいえこののイラストはかなりデフォルメが過ぎるのではないか。
あのちっこい足はなんのためにあるのか。
上が「ミジンコラッパハナアルキ」、下が「ニオイラッパハナアルキ」。これらは、水中生活に対応して進化している種である。
トビハナアルキは、硬鼻類のなかでも、「最も典型的に進化していて、後ろ足は大腿部はおろか頸部まで跡形もなく消失しており、鼻が唯一の移動器官として機能している。」
ツツハナアルキの乳を飲むヤドリトビハナアルキ。
トビハナアルキの骨格。
トビハナアルキの筋肉。本格的な研究ではないか。
ダンボハナアルキは、1属1種で、巨大な耳と飛行能力に関連した筋肉系の分化と強化が、著しい。
ランモドキは、花の擬態と匂いで餌をおびき寄せる。
多鼻類は、その名の通り、多数の鼻を持っているのが特徴である。平和的なナゾベーム。
攻撃的なオニハナアルキは、尾の先に毒爪がついている。
イカモドキ。
キンポウゲハナアルキ。
フシギハナモドキ。
マンモスハナアルキ。
ナキハナムカデの後期胎児。
ここまで読んで、私の記憶の何かが浮かび上がってきた。
これって鼻行類の成れの果てなの?
索引が又立派。
この本を書いたヒトは並の人物ではあるまい。ノーベル文学賞の対象になっていたかも。せめて直木賞を。