世界で初めて自閉症の人が書いた本「我、自閉症に生まれて」の著者・テンプル・グランディンが、8年にわたって「自閉症・アスペルガー症候群ダイジェスト」誌に書いたものをまとめたものが、この本「自閉症感覚・隠れた能力を引き出す方法」である。


「我、自閉症に生まれて」の裏表紙のテンプル・グランディンの顔とこの本の顔とを比較すると、いかに彼女が努力の結果、成熟していったか分かる。彼女は言う「自閉症スペクトラムの人は、じっと座って文句を言っているだけではいけません。積極的に変える努力をしましょう。」と。


「私は、人が目の動きで気持ちを伝えあうことを、50歳を超えた頃に本で読んで初めて知りました。」
テンプルのこの言葉も衝撃的であった。


自閉症と診断されたら

集中的な早期介入プログラムを取りれる必要性をすすめる。彼女自身が2歳半の時から早期介入プログラムを受けて効果があったからである。今日彼女があるのは、このプラグラムを自ら探し出して参加させた彼女の母親のおかげだという。それ故、「2歳から5歳までの子供に親がしてしまういちばんいけないことは、何もしないことである。」と主張する。また、「診断名にとらわれて、子供や子供の学習能力にかける期待を低くしてはいけません。」とも。


「自閉症スペクトラムの人の特殊な考え方には3種類ある。

1・絵で考えるタイプ・・・お絵かきやレゴが大好きな技術系

2・音楽と数学で考えるタイプ・・・数字や音符の関連性を直感的に見つけるのが得意

3・言葉の論理で考えるタイプ・・・表や数字が好きで、歴史、地理、天気、スポーツの記録に関心がある

子供の得意なものを伸ばすように働きかけ、基本的な思考パターンに合わせた方法で教えれば、大きな進歩が見られるます。」

現行の日本の画一的な学校教育を考えると、いかに発達障害の生徒を無視しているかと思わざるをえない。

本当は一対一の学習が必要なのである。


目次をおって書いてくことにする。

【子供の学力を伸ばすには】

・自閉症の私はこんなふうに考える。・・・危険などの概念を教える。

・柔軟性を身に着けさせる。概念について教える。・・「カテゴリー形成ゲーム」

・才能を伸ばす。

・やる気を起こさせる。

・本好きの子供にする。

・テレビゲームにのめり込んだら

・問題解決の実用的なスキル

【感覚刺激に対処する】感覚刺激は人それぞれ・簡単な解決法・治療における統合的アプローチ

・こんなふうに見える。

・こんなふうに聞こえる。・・・音の聞き分けが苦手

・自傷行為と痛みの感じ方

・感覚統合法を取り入れる・・・応用行動分析と組み合わせる

【言葉の遅れのある人を理解する】自分の言葉で語る・話を聴き逃してしまう・パニックを起こすのは怖いから・読み取る能力

・よくある3つの質問

・感覚が混乱した世界に住むティト(彼はPCに文字を打ち込むことによって外界と繋がった)

・こんな風に気持ちを伝える

・課題は隅々まで見せる

【問題行動に対処する】今の社会は住みにくい

・「ただのいけない行動」と区別する

・私のいじめ体験

・無作法を許してはいけない

・善悪について教えるには

【人づきあいへの第一歩】視覚的な「心の理論」・抽象的にならないように・私は行う人・感覚に基づいて共感する・私は「オタク」

・注意の切り替えが苦手

・社会のルールを学ばせる(本当に悪い行為を禁止するルール・礼儀作法・ときには守らなくても良いルール・制度上のルール)

・感情豊かな人もいる

・自尊心をはぐくむ(正しくほめる)

・対人関係を成功させる4つの秘訣

【薬物療法とバイオメディカル療法】私の投薬体験・服用時に注意する点・サプリメントと薬の相互作用・バイオメディカル療法・情報を                 身につけるには・

・西洋医療と代替療法を組み合わせる(効き目を判断するには)

・薬の使用ーー危険性と効能を知る

【脳の働き方】脳を大企業のオフィスビルにたとえたら・社交的な脳について・言葉の遅れがある場合

・サヴァンの天才的能力

・木はよく見えても森は見えない

・極端な男性型の思考

・赤ん坊の頭の大きさ(「共同注視」のスキル)

・視覚的に考える脳

【おとなになってから】社会に出ていくための基本的なスキル・能力を伸ばして就職できる技能にする・「裏口」から職に就く

・大学進学のアドバイス(いじめ・人生の師・能力のばらつき・学生寮に住む・クラブ活動・授業中の対策・】身だしなみ・専攻の選択・            大学から仕事の世界へ)

・車の運転はできるのか

・楽しい仕事か趣味をもたせる

・個性を大切に(「技術屋」対「スーツ族」・企業の世界)

・「ソーシャル・ストーリー」の活用

・アスペルガー症候群の人の可能性

・自閉症の遺伝子と天才の関係

以上が目次

この著書の中でテンプルはIQテストについて疑問を呈している。そして自閉症スペクトラムの人は早期介入によって大きく改善されると繰り返し述べている。しかし、大人になってアスペルガーだと知った人についてはどうなのか。ブログなんかを見ていると、カサンドラの伴侶や親の涙ぐましい努力の結果、今更何も変わらないという結論が大勢を占めている。しかし、大人だとしてみなすからなのかもしれない。ASDの人の精神年齢は実年齢の半分ぐらいだとみなせば、対処の仕方も変わってくるのではないかと、今なら思える。

この本によると、情報が脳に整理されて届くのに時間が掛かるし、その人独自の特殊な思考方法もあるので、先にそれを見つけないと会話は成り立たない。感覚過敏もストレスによって変動する。発達障害の人口は、年々増えていると言われるが、まだ診断されていない人の数を考えると、かなりの数字になるはずである。20~30人に一人ぐらいの割合ではないか。日本人口を1億3000万人とすれば、その30分の一なら。少なく見積もっても400万人はいるということになる。もっと国家規模で対策を講じなければならないのではないか。親や伴侶に任せられるほど、誰にでも対処できる単純な話ではない。専門知識と経験と情熱を必要とする。ネット検索で得られる浅く広くの知識では対処できないのは、この発達障害というものが百人十色だからである。もとの個性の上に発達障害がてんでバラバラに乗っかっているようなものだから、教科書通りに対処できないのである。人間は規格製品ではない。それ故、発達障害に対する情報を国民に知ってもらうためにも、もっと国は努力するべきである。発達障害のアニメやマンガを公募するとかもいいのではないか。発達障害のゲームなんかはないものか。子供が生まれる時とか、結婚届を出した時に発達障害についての小冊子を配るのはどうかな。皆でアイデアを出し合わなくては、不幸なカサンドラを増やすばかりである。