ジーチャ「結婚記念日はいつだったかな?」
バーシャ「もうそんなもん、忘れてしもうたよ。」


ジーチャ「いろんな事があったなあ。わしらの年は自販機の歴史なんじゃな。もうわしもこの通りボロボロじゃ。」
バーシャ「他のことはミーンナ忘れてしもうても、あれだけは忘れんのじゃ。」


ジーチャ「始めてもデートのことはわしもちゃーんと覚えとるよ。」
バーシャ「違うのじゃ。ほーらあの時のこと、わたしゃを泣かせたことじゃよ。」


バーシャ「忘れたとは言わせんよ。わたしゃ、あの時は死んじまおうと思ったくらいじゃった。」
ジーチャ「(ギクッ!)な、何だったかいのう・・・」


バーシャ「あんな1つ目のゴミ箱にジーチャはうつつをぬかして・・・う、う、う・・・」
ジーチャ「どのゴミ箱の事じゃ?1つ目のゴミ箱?」


ジーチャ「あんまり昔のことでよう覚えとらん。」


バーシャ「シラとぼけて、このクソジジィー!」
ジーチャ「一体いつの話なんじゃ?バアサンは、飯食ったのも忘れているというのに・・」


バーシャ「ほら、タバコ屋の自販機の隣に突っ立てた娘よ。赤い服を着て右にほくろがあったじゃろ?」


ジーチャ「あー、あの娘のことか。なんで今朝のことも忘れているのに、50年以上も前のことを覚えているのじゃ?」


バーシャ「わたしゃ、死んでも死にきれんのはネエ、私が先に死んだら、また若い子に手を出そうとするじゃろ。わたしゃ、絶対お前さんより先には死なんからな。ヒャッヒャッヒャッ。」


ジーチャ「何という執念。もう耐えられん。早く死にたい・・・。」


バーシャ「ジーチャ、泣くんじゃないよ。わたしゃ、お前さんを愛しているからなんよ。」


バーシャ「わたしゃ、忘れんのよ。いつまでも、いつまでも・・・・」


ジーチャ「どっちを忘れてくれるのじゃ、愛か浮気か。」


バーシャ「いつまでも・・・いつまでも・・・ぶつぶつ・・ぶつぶつ・・」