勝手に断りもなく解体工事をして建物の滅失登記をしようと計画したのは地上げ屋か地主か。おそらくその真相はこうではないのか。
地主は今のところピンピンしているようであるが、何しろ高齢である。娘と息子は、あの沢山の土地を相続しても払う現金がないが、物納の申請の手続きは非常にに煩雑である。その上、不動産の物納順位(1.更地 2.底地 3.賃家建付地4.自宅)からいくと更地が一番いいのである。
アレヤコレヤ悩んだ地主一家は、兎に角、更地にして早くまとめて売って現金化するという方針を出したのであろう。周りのこまごました家はいろいろ交渉して更地にしたが、道路に面した場所に昔ながらの平屋の古い建物が3棟建っているのが問題であった。特に端の家については親父さんと揉めに揉めた経緯がある。


物納できない不動産として「権利の帰属について争いのある不動産」にあてはまるのはまずい。悩んでいるところに地上げ屋からお誘いがあった。地上げ屋は、「連絡が取れなかったといって解体して滅失登記した者の勝ちですよ。お任せください。」といとも簡単に受け合う。地主一家はこれで全て解決と胸をなでおろしたのであるが、あの世から執念深いオヤジがそれをじっと見ていたのである。この親父こそは私の父である。


そして解体当日、オヤジの霊は行く予定のなかった娘と孫たちを現場に導いたのである。地上げ屋が解体している真っ最中に家主がストップを掛けるというようなことは、警察や弁護士が言うには、こんな偶然は日本始まって以来ではないかということである。私達は何故かたまたま行ったのである。未だに不思議である。
警察は、被害届を正式に受理して告訴状を書くために捜査を始めた。地主の周りに警察の捜査の手が及び、ここにいたってビビり始める。


「穏便に話し合いを」と高をくくっていた仲介の地上げ屋は、地主からの度重なる催促もあり、今度はこちらの弁護士に会いたいと言ってくるが、今はまだ会うべき時期ではないと拒否される。
今頃あの世で父はさぞかし溜飲を下げていることであろう。しかし、起訴されるまでは、まだまだ羽陽曲折があるはず。