高齢者を対象にした新型コロナウイルスのワクチン接種が12日から各地で始まった。菅首相は公約通り「4月開始」でやっているポーズを演出すし既成事実を作るが、その数や微々たるもの。その一方で最優先の医療従事者への接種がまだ1割程度と遅々として進まない。英オックスフォード大などの調査(10日時点)によると、少なくとも1回接種を受けた人の割合は、日本は全人口のたった0.87%、平均0.65%のアフリカと同水準。
7月には五輪を控え、菅首相は焦った。


なぜワクチン接種がこんなに遅れたかというとその原因は二つある。

一つは、先発のファイザー製薬は世界から引く手あまたの売り手市場の大企業であったが、日本政府のいつもの腰高の態度であった。ファイザー社は菅首相と直接話し合いたいと言ってきたのを、日本側はけったのである。ファイザー社は「交渉には首相を出してほしい」と主張し、河野大臣のような一閣僚は相手にしないとの強い意思を示した。
更に、製薬企業が要求する医療データ提供は、日本ではプライバシー保護の観点から不可能だと拒否せざるを得なかった。

もう一つは、1月末、欧州連合(EU)が、域内で製造されたワクチンの域外への輸出管理を強化すると発表。ファイザーの主力工場はベルギーなどEU域内である。空輸する1便ごとの承認が必要となった。

このようにファイザー社との契約は、日本側にとって不利な状況が重なっていくが、政府は何ら手を打つことなく菅首相のアメリカ訪問まで放置したのである。しかし、解散総選挙もあると公言した菅首相にとって、コロナワクチンの早急な確保は必至となった。


菅はバイデン大統領との好調な会談に気を良くし、アルバート・ブーラCEOを滞在先のワシントンに呼びつけ、対面会談を画策、コロナワクチンの遅滞打開を図ろうとしたが、ファイザーのCEOは、電話での協議にならという結論になった。そもそも注文したワクチンを早く送ってほしいといったところでファイザーは乗ってこないと見た政府は、追加注文という形でファイザーとの協議に漕ぎ着けたというのが実情であろう。


永田町関係者によれば、「新型コロナ対策で対面から電話に切り替えたとされていますが、袖にされた菅首相のメンツを立てたアナウンスに過ぎない。1月中旬にワクチン担当に起用された河野行革相が〈直接ファイザーと話をする〉と交渉役に名乗りを上げると、引く手あまたのファイザー側は〈首相を出してほしい〉と逆指名したほど強気。呼べばCEOが出てくると考える方が甘い」というはなしである。
菅首相もやっとことの力関係に気づいたのであろう。対面会談を引っ込めて、コロナも流行っていることだしでは電話でということにして、何とかメンツを保ったようである。


一方、ファイザー社としても後発の薬品メーカーが次々とワクチンを完成して追い上げてくる。ファイザーとしても先行による独占的な利益の確定を急ぐ必要が出てきたのである。日本が追加注文という形で提案してきたので、ファイザーのCEOはそれならということで協議に応じたのである。
アメリカはお金に物を言わせてワクチンを買いまくったのである。日本もGO TOキャンペーンに注ぐお金を、思い切ってワクチンにつぎ込んでいたのなら、救える命はもっとあったはず。後遺症で苦しむ人ももっと少なかったはずである。

日本政府はファイザー社から何とかワクチンを確保できたらしく河野大臣は「16歳以上の人のワクチン接種は9月末までには終えることができるはずである。」という会見に至った。もしこの政府とファイザーの協議が成功しなかったのなら、16歳以上の人のワクチン接種終了には3年かかるという計算をした人がいた。

ただ、心配なのは接種体制が整っていないのではないかということである。スムーズにワクチン接種をしなければ大切なワクチンを廃棄しなければなくなる。