リサイクルショップでホコリまみれになって転がっていた墨壺。息子には得体のしれない物体に見えたらしく 怪訝な顔をしていた。

私が小学校の頃、大工さんの仕事を一日中見ていても飽きなかったものである。いろんな作業の中でも墨の毛がきのために使われる墨壺の道具に魅了されたものである。


早速家に帰って雑巾で拭くとなかなか立派な墨壺が現れた。全長24センチでやたらと重たい。素材が何なのかよく分からない。300円とは思えない風格。また一つお宝が増えた。

鶴の細工が施されている。羽の部分に細かい作業に感心する。


向かい側には亀の彫刻。顔もしっかり作られている。

今でも大工さんたちはやたらと縁起を担ぐが、瑕疵保険もない昔はもっと真剣な思いだったのであろう。石一つ植木一つを動かすのにも縁起を担ぐ。木材にひく細い基準線は何物にも代えられない大切な作業だったのであろう。そのために使われた墨壺に縁起物の竜や鶴亀の彫刻が施されたのだろう。


横から見るとこんな具合。NETで同じものを探したが、ない。


裏側には長雲の銘が入っている。これも調べたが分からない。


鶴と亀に囲まれたこの部分が壺で、綿に墨を浸したものを入れる。これはもうカチカチになっていて触ると粉になってしまうのでこのままにしておいた。


連れのお尻側についている押しピンのような針のついたものを仮子又は猿子と呼ばれているもので、引っ張ると墨のついた糸が出てくる仕掛けになっている。先端を針で固定し反対側を持って指ではじくと黒くて細い墨の線が描ける。


非常に単純な道具であるが便利なものである。古代中国で発明され日本には奈良時代伝わったようである。同様のものはエジプトでも作られていたらしい。

Wikipediaによると、「1990年代、レーザー光線により直線を材木上に表示する装置が販売されるようになったため、墨壺、墨指の利用は激減した。また、単に直線を引く用途に性能を絞った小型のプラスチック製墨壺も市販され、旧来の墨壺は建築現場から姿を消しつつある。」ということである。