ロシアのウクライナ侵攻に対して、2022年3月2日、国連は緊急特別会合の開き、ロシア軍の撤退などの決議案を総会にかけたが、賛成141カ国で、反対5カ国であった。この5カ国は、ロシアのほかベラルーシ、シリア、北朝鮮、エリトリアであった。

この5カ国に共通していることは、独裁国家で言論の統制や情報規制をし、政権に批判的な者を逮捕し拷問などの弾圧を続けていることである。


この5カ国の中で聞き慣れないのが、エリトリアである。

エリトリアの面積は11.76万平方キロで、北海道と九州とを併せた広さとほぼ同じで、人口550万人、国民の宗教比率はキリスト教とイスラム教がほぼ半々という国である。
エリトリアの国旗。緑は豊かな農業の恵みを、青は紅海を、赤は独立闘争で流された犠牲を表す


隣国エチオピアの内戦に軍事介入。国際社会から非難を浴びています。古い歴史を持つ国ではあるが、オスマン帝国やエジプトの支配を経て、1890年にイタリアの植民地になり、第二次世界大戦中にはイギリスの保護領になった後、1962年にエチオピアの1州として併合された。中国で軍事訓練を受けたイサイアス書記長が率いる「エリトリア人民解放戦線」の武力闘争の結果、1993年に独立。それ以来、イサイアス大統領の「民主正義人民戦線」による一党独裁体制が現在にまで続いている。1992年には基本的人権や複数政党制を定めた民主的憲法を制定されたが、未だに施行される気配もない。
国民の生活は経済的にも貧しく奴隷状態に近い。この国家状態は、北朝鮮によく似ている。

ロシアのウクライナ侵攻に対する非難決議に反対した理由は、隣国エチオピアの内紛に乗じて軍事介入し国際的な非難を浴びたことで、2021年11月にはアメリカのバイデン政権から経済制裁を受けたことだと思われる。


エリトリアの軍事介入によりエチオピアの内紛は拡大し、全住民の3分の1に当たる約200万人が家を追われ、数百万人が緊急の食料援助を必要とし、死者は数千人にのぼり、国際社会から強い非難を浴びた。
2021年4月にはG7各国の外相声明により、、エリトリア軍のティグレ州からの撤退を呼びかけた。
2021年11月、アメリカ政府はエチオピア内戦の「人道危機への対抗措置」として、エリトリア軍への経済制裁を発表した。

このように見てくると、ロシアとエリトリアとの共通点は多く、同じ穴の狢(むじな)である。今回のロシアに対する制裁は、ロシアだけではなく、国連総会の議決に反対した5カ国すべてに課すべきである。理由は、国民の幸福ではなく自身の権力拡大にのみ関心があるような独裁者は、国のトップに立つべきではないからである。

バイデン大統領がプーチン氏に「権力の座にとどまってはならない」とした発言自体は正しいと言わざるを得ない。