4月12日の韓国におけるゼレンスキー大統領演説をニュースで見ていて、あれッと首をかしげざるを得なかった。国会議員たちの座席がまばらだったことやその態度に驚いた。欧米や日本などでは考えられないことである。まして、1950年の朝鮮戦争では韓国は国際的にも多くの国から援助の手を差し伸べられたからこそ今があるのではなかったか。ウクライナの置かれた状況を一番理解してくれるものとゼレンスキー大統領が考えたのもうなずけるというものだ。しかし、現実の韓国はその期待を見事に裏切ったのである。なぜか、なぜなのか、その理由が知りたい。

ゼレンスキー大統領の演説に冷ややかだった韓国国会=「器の小さい国」「恥を知るべき」と批判続出
2022年4月12日、韓国・文化日報は「ロシアによる軍事侵攻を受けているウクライナのゼレンスキー大統領が11日に韓国国会でオンライン演説を行い軍事支援を求めたが、議員らの雰囲気は他国に比べてやや冷ややかだった」と指摘した。

議員300人のうち出席したのは約60人で会場は空席が目立ち、途中で退席する議員も見られた。また、演説後に起立拍手をする議員は見当たらなかった。さらに、オンライン演説の場所も国会の本会議場ではなく国会図書館の大講堂だったという。また、会場では、冒頭、何人もの国会議員が挨拶を続け、画面の中のゼレンスキー大統領が所在なさそうに長時間、待機させられていたことも理解しにくい事柄である。
議員室がある議員会館とビデオ演説が開かれた国会図書館は徒歩3分の距離。「3分ほどの誠意」もなかったという意味ととらえられても仕方ないのではないか。

韓国の理解に苦しむ対応の理由を知りたくて、3日間ほどNET中を駆け巡った。以下は、その理由かと思われるものである。

■韓国からウクライナに対してゼレンスキー大統領の演説を要請したのであるが、おそらく事前打ち合わせの段階で相互の意図するところが大きく違ったことから、今回の韓国の礼を失した態度となったのであろうが、自分の意見が通らないからと言って国際的な場面で子供じみた態度をとるのは、国の威信にかかわることである。
韓国側は一体ウクライナに何と言ってほしかったのか。ウクライナ側は、その内容をどうして受け入れることができなかったのか。

■ウクライナ侵攻以降、韓国とロシアが二国間レベルで直接対立・衝突するような状況はない。韓国政府の対ロシア制裁は、単に国際社会と歩調を合わせたものであり、ロシア政府も非友好国リストに韓国を入れた事実を韓国政府に別途通知してはいない。
これまで韓国政府はウクライナから避難民190人の受け入れや、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相が北大西洋条約機構(NATO)外相会合に参加するなど、西側諸国と足並みをそろえてきたが、政権交代が決まって以降、ウクライナに距離を置き始めたように見える。

■演説の3日前には、両国の国防相による電話協議の打ち合わせで、ウクライナ側から対空兵器などの支援要請があったが、韓国側は「殺傷兵器の支援は制限される」と応じていない。事前のやりとりがあったにもかかわらず、中継で行われたゼレンスキー大統領の演説では再び兵器の支援を要請した形となり、暗に韓国側の姿勢を批判しているようである。
韓国、ウクライナへの「地対空武器の支援」を拒否…「“殺傷兵器”不可」の方針(WoW!Korea) – Yahoo!ニュース
ウクライナに兵器援助を要請された韓国が軍事物資の支援に渋々乗り出したと判明、両国間で協議が進行中 – U-1 NEWS.

結局、韓国国防省によると、ウクライナは4月8日の両国国防相電話会談で対空兵器システムの供与を打診したが、韓国は断り、文政権は殺傷能力を伴う対空防衛兵器の支援は不可能だとする立場を崩さなかった。これまでに防弾ヘルメットや医薬品などを送っているだけである。寄付としては1000万ドル(約11億円)で、楽天の三木谷氏をして「日本のビジネスマン1人の支援金額と韓国政府の支援金がほぼ同じ金額だ」と言わしめている。

■3月18日になって、一部の韓国メディアが「例外的な旅券使用」を許可され、数日間、ウクライナに入国して取材。しかし、その後は大手メディアだけでなく、個人韓国人ジャーナリストを含め、ウクライナ国内から情報を伝える人はおらず、外国の通信社などの写真や映像に頼るしかない状態で、韓国国内のニュースでは、ウクライナ情報は日に日に小さくなっていった。
■ウクライナ侵攻から間もなく、韓国では3月9日に大統領選挙が行われ、5年ぶりの政権交代が行われることになり、国内の動きがニュースの中心にならざるを得ない事情があった。4月12日までの約1か月の間に、ウクライナ侵攻に対する韓国政府の関心が薄れていくとともに、国会議員の意欲の低さも連動していったようである。

■ 韓国企業も、ロシアでの自動車販売台数全体の約23%を占めている現代自動車と傘下の起亜自動車は、ロシア市場から撤退する気はないようである。ブルームバーグが食品や自動車などの企業に取材したところ、ロシア市場は重要であるため撤退するのは難しいということだ。

■北朝鮮は「ロシアは、同じ国だったウクライナに派兵した」とした上で、「必要に応じて、われわれも南側(韓国)を占領できる」「われわれは南朝鮮を一気に攻撃できる」などと主張。しかし、また、「南朝鮮にはむしろわれわれの祖国統一を待つ住民も多い」と事実に反する内容を伝えている。韓国での世論調査では、統一が必要だと考える人は減少傾向にあり、北朝鮮主導の統一を望む人は皆無と言っても過言ではないだろう。「統一は必要だ」と考える韓国国民の数は史上初めて半数を切るという。文政権は北朝鮮と近いロシアを明らかに敵に回すような態度を取りたくないようでもある。

以上をよく考えてみると、南北に分断されて核武装に血道をあげる北朝鮮の相手だけでも大変なのに、核所有数世界一の独裁政権ロシアと核武装した中国に囲まれた韓国にとって、格好を付ける余裕なないのである。醜態だろうが、自分勝手だろうが自国にとっての損得でしか考える余裕がないのであろう。
「韓国が演説を許可したら外交バランスが崩れる」「韓国は中立を守って実利を得たほうがいい」「静かに騒がず、こっそり支援してあげよう」「戦闘食料、寝袋、ドローン、医薬品の支援をするくらいで十分」などと否定的な声も、その他「独裁国を目指す今の政権が演説させるとは思えない。演説できるのは次の政権になってから」「文政権は中国の目を気にしているんでしょ?」などの声も見られた。今まさに戦時下に置かれた国民の偽らざる声なのかもしれない。

ロシアのルキン教授は10日に、韓国でロシア産タラバガニの価格が下がり人気が急上昇しているとの記事をSNSに投稿し、「韓国人にとっておいしい海鮮を食べることは、東欧で起きている戦争よりはるかに重要なこと」と書き込んでいたというが、不安に揺れる韓国よりもロシアインテリの底意地の悪さを露骨に表している。

戦争の神髄は、憎しみと怒りと死の恐怖である。日常の根底にこういったものがある国民の心は、平和ボケした日本人には到底理解できないのである。