戦争に勝てば、どんな違反も許されると思っているロシア。
「勝てば官軍負ければ賊軍」という言葉があるが、戦争に勝てばすべての違反は許されるし追及されることはないとロシアは思っているらしい。何となくぼーっとは分かっていたような気もするが、はっきりとは認識していなかった。
現在、ロシアが非人道的な攻撃をしようが、物を盗もうが、一般人を無差別に殺そうが、拷問をしようが、化学兵器を使おうが、ロシアはこの戦いに勝てば追及されることはないと思っている。だからロシアは何としても勝利したいのであるし、一方、ウクライナは国を滅ぼそうとしているロシアを許せないので絶対に負けたくないのである。
戦争犯罪を裁くのが、国際刑事裁判所(ICC)である。混同しやすいのが、ICCとICJであるが、ICJは国と国との争いを裁くための裁判所で、国しか対象にならない。訴訟は両方の国が裁判に同意しなければならない。ロシアとウクライナの場合、ウクライナがICJに訴訟しようとしても、ロシアが同意するわけがなく、ICJに期待することは無意味となる。
もう一方のICCは個人を訴追する裁判所である。裁く罪は、集団殺害、戦争犯罪、人道に対する罪、侵略犯罪である。この裁判所は法律的にも機能的にも国連から独立していて、検察と裁判所が一体になったもので、ICCの検察官が捜査して、証拠を集めて個人を起訴し、裁判官が判決を下す。逮捕状を出すところまではできるがそれだけである。
第2次世界大戦後にドイツや日本の戦争犯罪を裁くために設けられた国際軍事裁判所では、3つのカテゴリー(平和に対する罪・戦争犯罪・人道に対する罪)が設けられ、平和に対する罪では、侵略戦争そのものを罪として、それを企画した者や加担した者の罪も問われた。人道に対する罪では、すべての一般人民に対して戦前・戦時中に行われた殺害や迫害を罪とし、ジェノサイドも含まれる。
しかし、第2次世界大戦では裁かれる側が、戦争に負けたので可能になっただけで、もし戦争の結果が反対だったらどうであっただろうか。いくらルールがあったとしても、武力で勝った方の正義がまかり通るのではないか。それ以降の世界は何も変わっていない。相も変わらずあちこちで悲惨な戦いが続いている。こんな世界だからロシアはどのような手を使っても勝てばよいと思っている。
今回のロシアによるウクライナへの侵略戦争は結果がどうあろうともロシアは裁かれなければならない。そうでなければ人類に未来はない。科学の発達と並行して化学兵器の開発はすさまじいものがある。もはやただの戦争では済まなくなって、人類の存亡がかかってくるようになった。どんなことがあっても侵略戦争を仕掛けたロシアを許すわけにはいかない。