アゾフ連隊って、今でもネオナチの極右勢力なのか。
2022年のウクライナ侵攻では、ロシア側が特別軍事作戦を行う目的として掲げるウクライナの『非ナチ化』を口実としているが、ここでやり玉に挙がっているのが、アゾフ連隊である。
ここ最近、南部の港湾都市マリウポリ(Mariupol)でロシア軍に抵抗するウクライナ軍の精鋭部隊「アゾフ連隊」がニュースにたびたび登場するようになった。WIKIPEDIAを参考にまとめてみた。
アゾフ大隊の歴史は、ハルキウのサッカークラブFCメタリスト・ハルキウのウルトラス(熱狂的なサポーターグループ)として1982年に始まったという経緯がある。アゾフ大隊は2014年に極右活動家らによって正式に創設され、当初はウクライナ東部の親ロシア派武装勢力に対抗する部隊であったが、2014年11月以降は、ウクライナ内務省の指揮下にある国家警備隊(National Guard)に統合された。2022年現在はウクライナ国家親衛隊の東部作戦地域司令部第12特務旅団所属のアゾフ特殊作戦分遣隊(通称: アゾフ連隊)となり、アゾフ海沿岸地域のマリウポリを拠点としている。この時点で急進的な極右と思われるものを排除したということである。
国家親衛隊の任務は「国民の生命と財産の保護、治安維持、対テロ、重要施設防護等を主な任務とし、ウクライナ軍と協力しての軍事作戦による武力侵略の撃退、領土防衛等も実施する事」である。
創設当初は極右・右翼やネオナチ、ナショナリストとして報じられていたのは、アゾフ連隊の前身のアゾフ大隊がしばしば極右のナショナリストの民兵と説明されてきたからで、アゾフ大隊の創始者、アンドリー・ビレツキーが極右政党の主催者であった事や初期の隊員らがウルトラスの中でも極右思想を持つ者が多かったことにも起因している。2022年4月現在はウクライナの精鋭部隊とされているが、構成員が多国籍にわたっているので、思想的に統一することが難しいというのが現状の様である。
『アゾフ大隊はナチス・ドイツの象徴であるハーケンクロイツの旗を掲げ、部隊章にはナチス親衛隊が用いた紋様「ヴォルフスアンゲル」を反転した紋様を用いている』とロゴとナチスとの関連性を2014年以降、多くのメディアが報じてきたところである。
一方、アゾフ連隊側は、これは反転したヴォルフスアンゲルではなく、ナチズムに無関係なNとIの融合であるとしており、『国家思想”National Idea”』や『国家連帯”united nation”』を表しているとしている 。そして、アゾフ連隊は公に外国人排斥を主張しているわけでもなく、「自分達はネオナチではない」とも主張している。
2020年3月現在までに関与を疑われた事件は複数あったが、それらの白人至上主義者の犯罪に対してアゾフが具体的に関与し、それを支援した事を立証出来た事件は一件もない。
2022年4月8日、日本の公安調査庁は、「近時、一部において、公安調査庁が『アゾフ連隊』をネオナチ組織と認めている旨の事実と異なる情報が拡散されている状況が見受けられるが、このような誤った情報が拡散されていることは誠に遺憾」とし、「これは『国際テロリズム要覧2021』の『ネオナチ組織がアゾフ大隊を結成した』等の記載を根拠にするようですが、そもそも、『国際テロリズム要覧』は、内外の各種報道、研究機関等が公表する報告書等から収集した公開情報を取りまとめたものであって、公安調査庁の独自の評価を加えたものではなく、当該記載についても、公安調査庁が「アゾフ大隊」をネオナチ組織と認めたものではありません。ついては、上記のような事実と異なる情報が拡散されることを防ぐため、当庁HP上の「国際テロリズム要覧2021」から上記の記載を削除することとした」と発表した。
アゾフ大隊は、外国人戦闘員の募集と誘致を行なっているとされ、ブラジル、イタリア、イギリス、フランス、米国、ギリシャ、スカンジナビア半島、スペイン、スロバキア、チェコ共和国、ロシアの人々を含む外国人メンバーがおり、約50人のロシア国民がアゾフ連隊のメンバーにいるということである。過去6年間に50か国から17,000人以上の外国人戦闘員がウクライナにやってきたと推定され、大多数は極右イデオロギーとの明らかなつながりを持っていない 。ただ、ネオナチへのファンタスティックな憧れを動機とする者がいたとしてもなかなか見分けがつかないのが現状であるらしい。』
ロシアに侵攻されたウクライナにとってみれば、アゾフの昔の古傷をあれこれ言っている余裕はない。何しろ刑務所の軍事経験のある犯罪者まで前線に配置しているというウクライナである。