大きな総合病院へ行くと、1日仕事である。待って待って待ちまくる。そこで、いつも本を持っていく。
今回は、辻原康夫著「招き猫は何を招いているのか」。


招き猫だけではなく、日本人と開運縁起物の世界全般について書かれている。文章自体が読みやすくウィットに富んでいて最後まで楽しく読める。


赤い座布団に鎮座した三毛の招き猫が定着するまで、長い歴史がある。
日本のイエ猫は、奈良時代初期に中国から渡来したと伝えられている。しかし、江戸時代になっても猫は馬よりも高価なペットであり、飼い方も紐で縛って飼っていたようであるが、放し飼いの御触れが出てからは、猫の数も増え庶民にも手の届くようになった。


招き猫の起源の伝承は、寛永10年頃(1633)、井伊直孝が、ねこの手招きによって落雷の難を逃れたという豪徳寺のものが一番よく知られているが、文献もなく信憑性のほどは、イマイチのようである。この後も、招き猫伝説や逸話は後を絶たないが、自転車操業の中小寺院が苦肉の策で売り出したというのが現実だったようである。初めは丸ジメの木製だったが、安政年間に今戸で手招きスタイルの陶製の猫が焼かれたらしい。


一般的に左手を上げた招き猫は、千客万来で水商売、銭湯、演舞場などに置かれ、主に夜の商売に好まれた。一方、右手を上げているのは、金運を招く昼の商売向けで家庭用である。


通常では顔のあたりで手を止めているが、なかには頭をこす「手長」の招き猫がいる。手長は、遠くのものやヒトを招き、低い手の招き猫は小さな福で身近な人を招くと言われている。


右手をあげたガラスの親子の招き猫は、手の位置も低く小さな幸せを招いているのか。


色や模様によっても、効能は違ってくる。古くは白猫であったが、1950年頃から常滑で大量生産が始まり、インパクトの強い三毛猫に変わったという。
黒猫は霊力が強いと思われ、魔除けや厄除けに用いられた。


「赤もの」と呼ばれる赤猫は、無病息災・病気快癒に対して効能があるとされている。
近年では、合格祈願の緑猫、家内安全の青猫、恋愛成就のピンク猫まで登場してきた。


そのものズバリの金運を招く金猫


最近では、両手を上げた欲張り招き猫が流行っている。


バックには鶴亀の模様。


宝船や縁起物を散りばめたパワーアップ猫。


金ピカで両手を上げた欲張り猫。


ちょっと珍しい竹の皮で作った招き猫。奈良の今井町の六斎市で買った。

何はともあれ、日本人の特殊な多神教民族信仰が、現世利益を求めた縁起担ぎの原点であるとこの本の著者は主張している。占い、おまじない、お守り、縁起物・・・・これらの諸々のものは、民衆の生のエネルギーの現れにほかならないとつくづく思った次第である。