いつか歯車を使って息子たちのためのプレゼントを作ろうと考えていた。男性がよしとするものはその本能からか戦利品のようなものを好む。勲章やトロフィーの類である。フィギュアーにしても、それでお人形ごっこをしようというのではない。着せ替えをしたり髪を梳こうというのでもない。だからカチンコチンの髪の毛で十分なのである。最近になって息子達の生態を理解するに至った。狩人としての野生の本能が未だにうごめいているのである。文明社会での狩場は、今やネットの中なのである。
一方、私達女性は、巣を造り子を育てを本能的にしようとする。それ故、人形ごっこ的なものが大好きである。我が身を飾りお人形自信になろうさえ思うらしい。すべてはドールハウスのイメージである。関節の動かないフィギュアーはゴメンである。ガンダムのロボットにしても動かねばならない。美しきもので巣を飾り、それにふさわしく着飾った我が身を置く事こそ理想なのである。関節人形を好む理由、それは彼女たちの子供であり、又、自信の身代わりなのだということである。彼女たちはネットでせっせとお買い物をする。料理のレシピを探し回る。すべては自分の理想とする巣のためである。しかし、たまには自分のために狩りをしてくれる狩人を探すためにのみネットをさまようこともある。
この屁理屈、それほど的外れではあるまい。まだまだ、オッサン達の理論は続くのであるが今日はこのへんで切り上げておこう。
そこで作るものは、ギアで飾り立てた小銭入れということになった。戦利品としてのコインを入れる入れ物と、道具の延長線上にある機械の部品としての歯車の組み合わせは、現代男性の心に訴えるものがあるに違いない。


これが新しく用意したパーツである。小銭入れはリサイクルショップで見つけてある。


はじめはこんな風にしようと思ったがあまりに普通。男は自分だけのオリジナルなものであなければならない。ウーンむずい・・・・。男は蘊蓄を傾けるのが大好きである。自慢するのも大好き。即ち、必要以上に自身を大きく見せようと虚勢を張ることこそオスとしての存在価値を同性に知らしめる行為である。それ故、普通は駄目である。


そこで思いついたのが、パソコンの部品。息子について日本橋をうろついた時に目に止まったもの。これが一体いかなるものなのかよく分からない。大きさがぴったりであること以外特に興味はないが、じっと見ていると造形的に面白い。見ていて飽きが来ない代物である。以前これでペンダントを作ってみたがイマイチだった。プラスアルファがいるのである。歯車と組み合わせたデザインなら、恐らく少しは気に入ってくれるだろう。男はジャラジャラとしたコイン的なものが好きだ。きっと太古の鏃か何かの記憶が今だに原始脳の何処かにこびりついているのだろう。こう考えると、チンジャラジャラのパチンコ屋が流行るわけもうなずける。


遺伝子が1本違うということは大きい。母親が息子を理解するのには随分時間がかかる。息子の謎が解けると不可解な夫の言動も理解できるようになってくる。しかし、もはや遅すぎる。夫は妻に理解されないままにこの世におさらばしてしまった。
これを作っていて、つくづく思う。私の不幸の根源は女の子を産まなかったことである。