自販機横のごみ箱さんのコロナ不安のささやきが聞こえてくる。
自販機横の双子のごみ箱さん。何やらカサコソとかすかな音が聞こえてくる。
A「変異ウイルスがいっぱいはやっているんだって。」
B「僕たちコロナのワクチンなんか打ってもらえないしなあ。」
A「ワクチンて腕の上の方に打つ筋肉注射だって。」
B「それに、僕たち腕もないし、住民票もないし、ワクチンのクーポンももらえないんだよなあ。」
A「僕たちって、コロナにかかるのかなあ。ゴミ箱さんたちがコロナにかかったなんて聞いたことがないんだけれど。」
B「ばっかじゃないの。人間たちは自分たちのことで手いっぱいで、毎日の感染者発表なんて今では何が何だか分からなくなっているのに、僕たちのことまでかまってランないじゃない。」
A「じゃあ、僕たちは僕たちのサイトを作って情報交換をしなくちゃ。」
B「腕もないのに一体どうやってキーボードを打つんだい。」
A「音声入力ってのがあるそうだよん。」
B「おまえ、頭がコロチンになってしまったん。第一、スマホもPCもないじゃん。」
A「アッ、誰かが僕の目の中に汚ねえマスクを放り込んだよん。救急車呼んで!」
B「人間がコロナにかかって死にそうでも来ない救急車をどうしてよぶん?」
A「助けてー、てけーえー、息ができないようー・・・」
B「僕たちって、息してるんだっけ。」
音がだんだん大きくなってきたような気もする。風もないのにゴミ箱ががたがた揺れている。赤身も増したような。・・・
(たばこ休憩している兄ちゃんが、マスクをごも箱へポイして煙草をスパスパしながら、ゴミ箱を不審な目で見ているが、急に逃げるように去って行った。)