あなたは雪国の不思議な雪妖怪を見過ごしているのではないか。
本を読んでいたら、初雪が降るころに飛び回って1週間の寿命の雪虫という虫がいるということである。お尻が白いふわふわの雪虫が大量に飛ぶと幻想的らしい。初雪とともに現れるのは、この雪虫だけではない。誰も捕まえたことがないので、一応妖怪という扱いになっているだけの生物がいる。例えるならば、ツチノコのようなものである。
雪の上を這いまわる「雪とかげ」。雪が積もった早朝に穴から這い出して来る。キーキーとか細い声で鳴く。雪を食べて生きているので雪が消えるとこの雪トカゲも消えるように死んでゆく。
人の後ろをついて回る「雪かげ」。雪と見分けがつかないので、この妖怪を見た人はいないのではないか。誰もいない雪道で何かの気配を背後に感じたら、それは、この「雪かげ」である。
粉雪のような小さな卵から孵化し、牡丹雪のように空中をふわふわ漂う「雪ボタン」。雪ボタンは自力で飛ぶことができるが、地面や木々に着地すると溶けるように死んでゆく。
雪が降る地方では、これらの雪の妖怪に一度は出会っているが、誰もそれが雪の妖怪たちだとは思わず見過ごしているのである。好奇心の強い幼児期には皆この妖怪を見ているが、年を経るにつれて記憶の彼方に消えてゆく。大人になっても夢の中には時々現れるらしいが、ほとんどの人は目覚めとともにその夢を忘れてしまうという。
私は、見た夢のほとんどを覚えているので、これらの雪の妖怪たちの姿を再現できたのである。あなたも、今宵、夢をて雪妖怪に出会うかもしれない。