絵を描く以前の人にとって何が一番の問題かということを改めて知った。私の考えは甘かったとしか言えない。誠に申し訳ない。

円も線も満足に描けない人はどうすればいいか。まずはここから初めなければならない。

今までの経験から、円や直線をフリーハンドで描けない人は、空間把握能力が低いのである。それ故、文字を書いても軸線は一定せず、あっち向いたりこっち向いたり。又、小学校の時は、文字の練習帳の正方形の中にバランスよく文字を書くことができなかったはずである。更には、どちらかと言えばスポーツは苦手な人が多い。

これらの原因は、目と体とが上手く連動していないことが原因だということは誰にでもわかる。この傾向は、全く改善しないのかと言えばそうではない。努力すれば程度に応じて上達する。

デッサンというものは、90%までは技術の訓練である。後の10%は、悲しいかな天性のものである。しかし、90%の能力があればマンガは描くことができる。もともと絵がヘタクソな人のほうが個性的でインパクトの強いマンガを描くことができる。上手な人ほど手が走って没個性的になりモノマネが上手いから何時までたってもユニークな絵が描けないということもある。ゴールデンタイムに放送される「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」、「クレヨンしんちゃん」なんてのがいい例である。絵がヘタクソだから全てダメということはない。マンガにとっていちばん大切なのはストーリーである。後の10%を補うのは、幅の広い読書と知識である。


円を描く練習をするには、筆で練習するのが一番であるが、最初からは大変なのではじめは鉛筆でぐるぐると円を描く。毎日描く。食前食後に描くぐらいの勢いでなければならない。ヘタクソに初めの日は大きな円を、あくる日は小さな円を描く。これを繰り返す。自転車の運転と一緒である。そしてなぜうまく描けないのか言語化する。必ず自分の悪い癖に気付くはずである。ゆっくり書いたり速く書いたり筆記道具を変えたりして自分の癖を分析すること。


直線の練習は、間隔を均一に描き、その間に又線を引くことを繰り返す。コレが結構むずい。上手く円や線が描けない原因は、殆どの場合、手首を使ったり指先を動かしたりして描いていることに起因する。


指先や手首は絶対動かしてはいけない。肩の関節を動かして描くのである。たったコレだけのことが出来ないのである。あと注意する点は、ゆっくり描くこと、慣れてもゆっくり描くこと。それと、鉛筆をあまり寝かさないことである。垂直というのは余りに立てすぎであるが、60度ぐらいは立てたほうが描きやすい。鉛筆を寝かして描くと、どうしても指先や手首で描く癖がつくので、きれいな線が引けない。

これらのことを守って毎日練習すれば、いつの間にか円や線が描けるようになる。その間、絵を描くなということはないが、一つしてはいけないことがある。トレースすることは絶対やってはいけない。上からなぞることは、カンニングと同じである。百害あって一利なしである。上手な絵を見ながら描くのはいいが、トレッシングペーパーをあてて描くことだけはやってはならない。時間の浪費である。

下手でもいいから、自分の目が見たものを自分の手で描く訓練こそが大事である。できれば実物を見て描き、次に見ないで描く訓練をする。

最後に付け加えるなら、細い線を重ねて輪郭を描くクセも良くない。一本の線で描くようにする。いわゆる一本線描法である。一本の続きの線で描く事だと勘違いする人がいるが、決してそうではないので注意。

一度にアレモコレモというと大変なので少しずつやって行きましょ。

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