
我が家にある檜扇といえば、お雛様が持っている此の扇だけであった。

裏は無地。認識も此のぐらいだったが、京都で個展をした時に神器などを作っている工房の方と知り合い、檜扇の材料を入手することが出来た。

いまでも、請求書と手紙が同封された封筒を大事にとってある。手紙には、「出来上がったら送ってほしい。最後の仕上げはします。」という内容のことが書かれてある。

仮止めの木の棒が指してあるが、出来上がったら金属の要で止める。

すべてが綺麗に仕上げてある。うっとりする。

ひのきの柾目の薄板は全く何の狂いもなく真っ直ぐである。

此のひのきの薄板に胡粉を塗布し、布で磨いた後、日本画の絵の具で図柄を描く。日本画を描いていたので出来ないことはない。

しかし、描くつもりはない。時々出してみては眺めているだけである。此の見事な檜扇に何の絵を描こうというのか。このままでいい。