年末にもかかわらず、リサイクルショップを覗きに行ってこの扇を見つけた。


慣れてくると、扇を開かなくても大体の様子がわかるようになってくる。これは舞扇。


親骨が2本と中骨が8本でできた舞扇。下地は手ぼかしの上にパール粉をひいてある。


その上に3版のシルクスクリーンで糊を引いて、それぞれの型の糊の上に銀台に着色をした手箔を詰めている。これは桃色と納戸色の銀箔である。すべて手作業でしかできない。


銀箔と納戸色の箔。


霞も納戸色。


器械で蒸着箔を転写したものではないので、一寸ザラッとしているのが見て分かる。


近頃ではこの端の糸止めのないものがある。工程を省いてコストダウンをしているのである。糸止めの前に、扇の地紙を半分に割いて折り返して端を糊止めしている。これが舞扇の普通のやり方である。飾り扇と違って舞に使う扇は出来るだけ丈夫に作らなくてはいけないのである。


左の親骨の要の付け根に3センチぐらいの凹みがあるがあるが、ここには鉛が埋め込まれていて、扇の重心を手元に置いて空中で回しても安定するようになっている。


日本の扇の地紙は既数枚の薄紙を張り合わせてできている。舞扇は5枚の張り合わせで、真ん中の芯紙を2枚に割って其の中に糊を薄くひいた竹の中骨を差し込んで張り合わせている。繊細な手仕事である。日本文化の繊細で完成度の高さを見る思いがする。


親骨に穴を開け糸で止めてある。

こんな手仕事の分業の集まりでできている扇が、リサイクルショップに出てくると、なんと300円という安さ。大量生産の安物の扇と見分けがつかないお店の人がこのような値段をつけたのであろう。

梅の模様の扇なのでお正月に飾ることにする。