耳ぱっちん・V字カットの猫ちゃんのお怒りは大変なもの。
商店街の突き当りのお寺の塀の上で、何やら訴えるような鳴き声を上げている猫ちゃんがいた。
逆光でよく見えない。猫ちゃん自体も黒っぽいので影のように見える。
方向を変えて見ると、黒と茶のまだら模様の猫ちゃん。しかし、耳がV字型にカットされている。
よく見ると耳のカットされた周りの毛が全く生えていないところを見ると、避妊手術をされてまだ間がないようである。飼い主のいない猫の場合、避妊手術をした証に片耳をV字にカットしてから放すのである。
鳴き声が尋常ではない。全く動こうとはせず、瓦の上で大きい声で鳴き続けている。
そこで猫ちゃんに優しく声をかけてみたところ、こっちを見て一時泣き止んでじっとみつめる。
次の瞬間、ものすごい声で威嚇し始める。こんなに怖い顔の猫ちゃんを見たのは初めてである。
牙をむき出して怒っている。それもかなりの勢いであるので、上から飛びかかってくるつもりかと思えるほどである。余程人間不信の体験が最近あったに違いない。
思えば、餌と優しい声に誘われて、近寄ってみればあっという間に捕獲されて避妊手術されて耳ぱっちんだから、人間不信になるのも無理はないと勝手に想像たくましくする。もしそうなら、いくら保健所へ連れて行かれて始末されずに済んだのだから命拾いしてよかったという認識は猫ちゃんにはない。
麻酔が切れてお腹が痛いというような鳴き声にもとれる。兎に角、瓦の上に座ったままずっと鳴き続けていた。こんな猫ちゃんを見たことはない。なぜだか無性に絞り出すような鳴き声が今も耳元に残って離れない。