フランス国立クリュニー中世美術館「 貴婦人と一角獣」の図案集を探し出した。
(インターネット ミュージアムより)
随分昔、パリへ行った時偶然見つけて入った美術館で、見事なタペストリーに見とれたものである。
(インターネット ミュージアムより)
先日見た映画「パリへの逃避行」で、フランス国立クリュニー中世美術館のシーンが出てきた。
(インターネット ミュージアムより)
主人公の彼女が、幸せな家庭から逃げるようにパリにやって来ようとした衝動の原点の一つがこのクリュニー中世美術館である。
彼女は夫に言う「本を買ったの“貴婦人と一角獣”」と。彼女だけの非日常の象徴であったが、育児に追い回される主婦の孤独で疲れた気持ちを夫には理解できない。
彼女は“貴婦人と一角獣”に引き寄せられるようになりふり構わずパリに向かいクリュニー中世美術館に行くのである。
(インターネット ミュージアムより)
この美しい一連の中世のタピストリー“貴婦人と一角獣”は、その題材一角獣こそが日常に膿み疲れた人間の逃避行の幻想が生み出した象徴と言える。
フランスへ行った時、確かに美術館でタペストリーの本を買ったはずなので本棚をゴソゴソ探し回った挙げ句にやっと見つけ出した。「UNICORNS]という塗り絵の本である。
カタログの代わりにスライドのセットを買ったが、変色していて美しい色合いは飛んでしまっていた。
ユニコーンというのは、紀元前から伝わる想像上の生き物で、額から映える強靭な角と単蹄を持つ俊敏で獰猛な生き物であるらしい。その角と蹄は万病に効くと言われ珍重されたが、海に生息するイッカクや代用のものが売り買いされたようである。
生け捕りにすることは難しいが処女には心を許しその膝の上で眠ってしまうのですきを見て生け捕りにするという。
ユニコーンは神話の中やキリスト教の寓話の世界で進化しつつ今日の姿に至っている。
Wikipediaには詳しく書かれているが、この本にも英語で解説が入っている。
馬、ライオン、羊、鹿、豚・象など優れた部分をかけ合わせたウルトラスーパーアニマルがユニコーンである。
これなんかは山羊に似ている。物語に合わせてその姿形が変化するようで大きさもまちまちである。
タペストリーだと曖昧な部分も、この線画を見ると細かい部分もはっきりわかる。
こんなに小さなミニユニコーンもあった。
裏表紙に描かれたユニコーンは現在流布しているユニコーンの姿に一番近い。
人には不可能なことはないという絶対的な自信がこの様な架空の獰猛な生き物を作り上げたのであろう。事実人間は、科学という魔法で次から次へと不可能を可能にしてきた。しかし、現実には地球上の数え切れない生き物を絶滅種へと追いやってきた。
ユニコーンは人間が夢見る理想の姿なのかもしれない。しかし、鏡に写ったその姿は獰猛な見たこともない動物でしかない。