Z世代はどこから来てどこへ行くのか・・・・
時々、Zジェネレーション(Z世代)という言葉を見かけるが、漠然としか認識できないままであった。先日若い世代の1典型とでもいえる若者と話をする機会があって、もしかしてこの人は、Z世代なのではないかとふと思った。それで、いい機会でもあり、Z世代についてもう少し詳しく調べてみようという気になった
Z世代が、どこから来たかというと、カナダの作家、ダグラス・クープランドの著書『ジェネレーションX』に由来しており、アメリカでは1965~1980年頃に生まれた世代が「ジェネレーションX(X世代)」とよばれたのである。それに続く1980年代~2000年代初頭頃に生まれた世代を「Y世代」と呼び、更にその後の世代をアルファベット順でZ世代と分類したのである。
年代の分類には諸説あるが、一般にZ世代とは、1996年~2015年頃までに生まれてきた若年層を指すらしい。このジェネレーションという考えは、「近頃の若者は・・・」という大人たちが、何とかして理解しがたい若者の世代を理解しようとした苦肉の言葉である。何故このようなジェネレーションという言葉が必要だったかというと、企業にとって若者層をターゲットとした商品開発や社員募集などの時に、若い世代を適切にとらえる社会的概念を共有しなければならなかったからである。若い世代を分析しそこから見える共通項を探すことは企業戦略にとって重要なことであった。世代を表す最大公約数としての概念、同時に最小公倍数としての概念を分かりやすくとらえることは、企業にとって未来の発展につながることなのである。それ故社会学者たちはこぞって若い世代の解釈に励むのである。分類される若者にとっては、
多種多様な若者の実態を一言で表すことは不可能である。それで、ああでもないこうでもないと社会風潮に照らし決めつけていくのである。社会環境の中で若者は成長していくのであって、若者が社会風潮を作っていくのではない。Z世代の親の世代は、おもに「団塊ジュニア世代」にあたる40代後半~50代前半で、バブル崩壊後の不況期に就職氷河期を経験し、大企業の倒産や終身雇用の崩壊を目の当たりにしてきた世代でもある。この親世代の背中を見て育ったのがZ世代である。それ故、彼らは、大企業や公務員を目指す安定志向が強い一方で、終身雇用などは当てにしていないので、スキルアップなどの成長志向も強い。
Z世代の特徴として調べてまとめてみると
・ソーシャルネイティブ(日常的にデジタル機器に触れていたデジタルネイティブな世代でテレビタレントよりもインフルエンサーの影響を受ける傾向)
・コンテンツのマルチタスク(膨大な情報に日々接しているため、限られた時間の中で自分に合った情報をより効率的にキャッチするため、コンテンツあたりに費やす 可処分時間が短い傾向)(「ミレニアル世代」の集中力持続時間は12秒、それに続く「ジェネレーションZ」のそれは8秒)
・ダイバーシティ(多様性)の重視(ソーシャルメディアで日々多くの情報や人、コミュニティと接しているため、多様性を重視する傾向)
・”モノ”より”コト”を重視(価値基準はブランドよりも本質に重点が置く・消費する”モノ”の表面的な部分ではなく、内容を選択)
その結果、
・「不況免疫」
1995年の阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件に始まり、2001年のアメリカ同時多発テロ事件、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、そして2020年の新型コロナウイルスといった、大きな社会情勢の変化を認識。「将来的に財産になるから、持っておいたほうが安心だ」と考える傾向
・「コミュ力(りょく)」を周りのために使う。
・「社会貢献」
環境教育やボランティア教育を受けてきた。それ故、「自分の存在がどう社会の役に立つか」「みんなと喜びをシェアしながら働きたい」と思う。
Z世代を分析すると
・悪目立ちしないように気を付け、角が立たないよう、でも、自分の意思はしっかりと主張する。
・学校教育では「多様な人々との共生」の概念を学び、社会問題について仲間と意見交換する傾向。多種多様な環境に生まれ育ち「人権」「平等」を重要視。
・Z世代は不況の時期に育ったので実用的、堅実的、コスト削減、貯金に高い関心を持つ傾向。成功は努力の賜物であり、運とは関係がないと考える。
・実際に達成可能で、あまり洗練されていないコンテンツを見たいと考える。
・店で買い物をすることを好みます。彼らは、高品質のものを確実に購入するために、実際に商品を見たり触ったりすることを好む。
・個人を賞賛し、好きなイメージ、なりたい人になれることを好み、リアルとユニークさ(自分だけの個性)を追求。
ということらしい。親世代の希望でもあるような気もする。
(仕事観)
・「副業」「ジョブ型雇用」の「二刀流」。
・「仕事」と「結婚・出産(育児)」、「仕事」と「趣味(プライベート)」の両立。
・会社への帰属意識希薄。、転職に抵抗感なし。
(理想の企業)
・キャリアアップの機会
・社会への貢献
・柔軟な勤務体制
・ヘルスケア及び家族に関する福利厚生
・学生ローンの返済支援
(政治的)
社会問題は穏健でリベラル。財政・安全保障問題は穏健な保守的傾向。
(学習)
YouTubeや学習アプリ/インタラクティブゲーム等のオンラインツールを介した学習形態を好み、自主学習を好まず、教師主導の学習形態やクラスメイトとのグループ学習を好む傾向。また、ジェネレーションZの75%が大学進学を重視しない傾向。
Zジェネレーションという概念は主にアメリカで使われた言葉であって、それがそのまま日本の若者に当てはまるのかというとそうではない。日本の若者たちは細分化され分断された特殊なグループに分かれ、決して交わることがないような境界を作っている。その境界は目には見えないので一見すると大人には単なる一群の若者世代なのである。
上にあげられたZ世代の特徴を持つ若者が、現代社会を泳ぎ切って自分の未来を切り開いていくのはほんの一握りのエリートだけである。夢を諦めて生きざるを得ない若者たちの社会学的研究はあまりなされない。自分の人生を諦めた若者たちをひきつける「異世界に転生」というテーマの文化こそ、日本のZ世代を代表する一つの世界なのではないか。孤立する若者と孤立を恐れる若者という表裏一体となった若者たちが、日本という閉鎖社会の中で一体どのように成長していくのか今は誰にも分らない。彼らが子供を育てた時に初めてその実態を表すのではないかと思う。