プーチン大統領はロシアのウクライナ侵攻の目的は、威圧され民族虐殺に遭っている人たちを守るためだとし、ウクライナの「非軍事化と非ナチス化」を実現するのだと主張した。
ロシアがウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチの集団だ」と主張していることに対し、ユダヤ系のゼレンスキー大統領は強く抗議してきた。ウクライナでは民族虐殺などは起きていないし、ウクライナは活発な民主国家で、大統領はユダヤ系だ。「いったいどうやったら私がナチスだというのか」と、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は反発するのも当然である。逆にゼレンスキー氏の方が、ロシアによる侵攻は第2次世界大戦のナチス・ドイツによる侵略に匹敵すると批判したぐらいである。

ロシア連邦外相として5月1日、イタリアのテレビ・インタビューに答えて、「ナチス・ドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーの血統にユダヤ人の血も入っていた」と発言した。これにイスラエルも猛烈に反発したが、直ぐには、ラブロフ外相は発言を撤回しようとはしなかったので、ロシアとの非難の応酬に発展していったのである。
この不用意な発言は、外交官としてのラブロフの政治生命はもとより、国連におけるロシアの安全保障理事会、常任理事国からの追放に引き金となりかねない致命的な失言であった。
ちなみに、プーチン大統領は69歳、ラブロフ外相は70歳である。同じ世代でもある。

ロシアがウクライナの「非ナチ化」を名目に侵攻を続けるなか、ラブロフ外相は5月1日、ユダヤ系のゼレンスキー大統領が「ネオナチ」だという主張を正当化するため、「ヒトラーにもユダヤ人の血が流れていた」と発言したことに対し、イスラエルが激しく反発したのは当然であり、「国連」という組織は「ナチスドイツを叩き潰す」ために米ソが協力してできたものだったからである。それなのに、外交の表舞台で、一国の外務大臣が「ホロコーストはユダヤ人の自作自演」と発言してしまったら、すでにその国に国連の席はないもの、と覚悟せざるをえない事態である。
そうしたなか、イスラエル政府は5日、ロシアのプーチン大統領がイスラエルのベネット首相との電話会談のなかで、この発言について謝罪したことを明らかになった。イスラエルを敵に回すことがいかに不利なことかプーチンにはよく分かっていた。ロシアにおいては旧ソ連時代から、「ヒトラーにもユダヤ人の血が流れていた」という噂はまことしやかに語られてきたからと言って、この場に及んで国際問題に発展させることがいかにまずい事だとプーチンは判断するだけのまともな判断力があった。ラブロフ外相よりは、至って正常だった証拠である。
、全世界に1,340万を超えるユダヤ教徒が存在する。民族独自の国家としてイスラエルがあるほか、各国に移民が生活している。
ユダヤ人を人種や民族と規定する見方は、19世紀以降のナショナリズム、社会進化論、反ユダヤ主義の産物であり、また国籍を示す用語でもないという。「ユダヤ人」は、キリスト教文化圏では一種の宗教的差別概念、また少数派、無国籍放浪者としての社会的差別概念を含む言葉として用いられてきた。現在、イスラエル人やユダヤ教徒、またはユダヤ教がもたらした伝統や文化を堅持している人々を指して、ユダヤ人と呼ぶとする。生物学的、遺伝学的な根拠はないにもかかわらず、「ユダヤ人の血」という表現がいかに差別的な表現であったか思い至らなかったラブロフ外相は、国を代表して発言する資格はない人物である。終始一貫して、嘘と欺瞞の発言を平然と繰り返してきた結果、「ユダヤ人の血」発言もその延長線上に
あったと思われる。
ベネット首相も、そんなラブロフ外相の軽はずみな発言の真意も分かっていながら、これ以上言い争うことなく、この謝罪を受け入れたのであった。
プーチン大統領はこの一件を考えても、例え、人格的には褒められたものではないにしても、公私を混同させずに外交的判断ができるほどには正常である。ただ、プーチンは、プロの軍人経験はないにもかかわらず、ウクライナに侵攻したことはまずかった。ヒットラーの犯した過ちをプーチンも又犯してしてしまった。二人に共通していることは、絶対的な独裁者に成長してしまって、誰の意見にも謙虚に耳を傾けなかったことである。