旧ソ連の対独戦勝記念日が行われた5月9日、ロシアのセルゲイ・アンドレーエフ駐ポーランド大使が、ワルシャワ市内にある旧ソ連兵の墓地を献花のため訪れた時、手にウクライナ国旗やプラカードを持った集団から、ウクライナ侵攻への抗議行動として赤い液体をかけられた。大使は慌てた様子もなく眼についた液を手で拭って、献花もせず立ち去ったと、ロシア通信は伝えた。その後、ロシア外務省は、この事件に対し強く抗議して、後日安全に献花できる機会を設定することを求めた。

戦争というものは、憎しみの連鎖を招くものである。抗議するのはいいとしても、赤い液体を思いきり相手にぶっかければ、相手は怒るだろうし、平然としている人ほど心の奥底に憎しみの炎をため込むものである。抗議活動も度が過ぎれば、お互いの憎しみを単に掻き立てるだけになる。
ウクライナ侵攻は子供の喧嘩ではない。大人同士の殺し合いである。特に先に手を出したロシアはその手にやりどころに困っている。そんな時に、憎しみをあおるような行動は抗議活動としてはふさわしくないのではないか。
攻め込まれたウクライナは、ロシアの暴挙に対して、防衛したり抗議はするが、モスクワを攻撃したりはしない。軍事力では格段に強大な力を持った国に考えもなしに向かっていけば、ウクライナ国民の更なる犠牲が出るのを避けることができない。今は、殺してやりたいほど腹の立つ相手だろうが、余計な憎しみをあおれば、ウクライナのどこかで余計な人の血が流されることになるかもしれない。赤い液体をぶっかけるのは、一種の暴力であるし、かなり相手のプライドを傷つけることになる。
抗議活動は復讐行為ではない。もっといい方法があったはずである。
戦争に駆り出されて捨て駒になって亡くなっていった旧ソ連の兵士たちも又、戦争の犠牲者である。大使級の人達が戦争の最前線に行くことはない。ロシア大使たちは旧ソ連兵の墓に何を祈るのであろうか。
ポーランドの歴史を振り返れば、戦争に蹂躙された悲惨な過去を持つ。ロシアのウクライナ侵攻を我がことのように思い、支援している国であるからこそ、そこにいる人たちはウクライナの国民がこれ以上の被害にあわないように気配りした方が良いのではないか。