ロシア軍は、ウクライナ東部や南部の「占領地」で、住民を拉致しシベリアや極東サハリン島に強制移送しているとして、ウクライナが非難している。東部2州では、侵攻前から「難民保護」の名目で移送侵攻後を含めると累計で数万人規模に達する可能性があるという。ウクライナのベレシチューク副首相によるとロシアの侵攻後、強制移送された住民は4万人に達するとのべた。又、ウクライナのウニアン通信によると南部ヘルソン州でも多数の女性がロシア軍に誘拐されているとの情報もある。

住民移送の事実はロシア側も認めているところで、極東メディア「サハリン・インフォ」(電子版)によると、侵攻前後にシベリアや極東に移送された東部2州の住民は、ロシア政府の公式データだけで約9万5000人に達すると報じている。
移送先では、シベリア中部の工業地域クラスノヤルスク地方が最多の約3900人で、炭鉱や天然ガスの産業が盛んなケメロボ州や北方領土を事実上管轄するサハリン州にもそれぞれ1000人以上が到着したという。ロシア政府は「難民」としているが、現地の人口減への対応策や、労働力の補充の意図があるとみられている。



ロシア連邦には「ユダヤ自治州」という行政区画があり、1930~50年代、政治犯のほかクリミア・タタール人やチェチェン人など反抗的とみなされた少数民族を、シベリアや極東各地に移送し、労働力として使役させた経緯がある。
ダヤと名付けられているが、場所は東シベリア、中国の黒竜江省とアムール川を挟んだ対岸の湿地で夏は暑く冬は極寒、長らく無人だったこの「自治州」の民族構成は「ウクライナ人」が非常に多い。

ドイツナチスが政権を掌握するより5年も前の1928年、スターリンは、2022年のいま現在、プーチンが狙っているのと同じ黒海沿岸の土地から現地住民を強制退去させた。スターリン時代、ウクライナやベラルーシ、モルドバ、ベッサラビア住民の「計画的植民」という強制移住が行われた。
特に、最大規模のユダヤ人コミュニティがあったオデッサ~オデーサなどからユダヤ/ウクライナ系住民を「ユダヤ固有文化の奨励」などと宥和的な口実で極東の辺境に強制移住させたのである。

ところが1930年代後半、スターリン粛清が始まると、ユダヤ人指導者は逮捕、投獄、行方不明などとなり、現在の「ユダヤ自治州」のユダヤ人口比率は1%にも満たない状態である。これこそ、典型的なユダヤ人虐殺の「ポグロム」である。

そしてまさに現在も、マリウポリやハリコフから、ロシアはウクライナ人を強制移住させようとしているのである。

プーチンが学んだレニングラード大学には露骨な「ユダヤ人制限枠」が残存、ソ連ユダヤ差別の一大中心になってた。また、ラブロフ外務大臣が学生だった時期、「モスクワ国際関係大学」も中東戦争真っ盛りで、「ロシア的なるもの」が称揚され、「ヒトラーはユダヤ系」「最大の反ユダヤ主義はユダヤ人自身が振り回すものだ」といった考えが日常化していたようである。
ロシアのユダヤ人差別問題は極めて根が深く、ロシア正教を含むキリスト教圏では、「ユダヤ教徒」はイエス・キリストを処刑した民族として敵視され、生産労働から排外される場合が多かった。


ウクライナ侵攻後の3月、ロシア政府が公表した文書には、ウクライナの市民10万人をロシア連邦内の85の地域に移送させる計画で、ロシア全土にわたり、サハリンなど、極東の地域にも7,000人以上を送るとしている。更には、ロシア国籍を持たない孤児を養子縁組する手続きを簡素化するために、法改正案を議会下院が作成しているということである。実際、ウクライナの発表によると3月には数千人、4月には数万人の子供が拉致されロシアに連行されたと発表して国際問題になっている。

21世紀の現在、世界の人権意識も変化している。しかし、プーチンの頭の中は未だに20世紀前半のままに留まっている。プーチンに時代遅れの非人道的な考えを改めさせるには、世界中からのシュプレヒコールが必要なのである。だから、私も執拗にプーチン批判をブログに書くことにしている。