2022年7月8日午前11時半ごろ、奈良県近鉄大和西大寺駅まえで、安倍晋三元首相が選挙の演説中に銃撃され、同日午後5時3分死去された。
政治家が銃撃され殺害されるなどということは、現在の日本ではちょっと考えられないことである。


犯人の山上容疑者は、現場で直ちに逮捕されたが、「安倍元総理大臣に対して不満があり、殺そうと思って狙った」という趣旨の供述をしている一方で、「元総理の政治信条への恨みではない」とも供述している。政治的信条の恨みではなく恨みに思っている宗教団体に関係している安倍元首相に対するものだと動機を語っている。
あちこちの報道や発言ではテロ行為として扱っているが、この場合テロ行為ではないのではないか。テロと暗殺の違いについて調べてみた。

・テロとは、政治的目的のために、暗殺・暴行・破壊活動などの手段を行使して威嚇すること。
『日本大百科全書』によると、テロリズムとは「政治的目的を達成するために、暗殺、殺害、破壊、監禁や拉致による自由束縛など過酷な手段で、敵対する当事者、さらには無関係な一般市民や建造物などを攻撃し、攻撃の物理的な成果よりもそこで生ずる心理的威圧や恐怖心を通して、譲歩や抑圧などを図るもの」とされている。ターゲットが特定されていない場合は無差別テロと呼ばれる。

・一方、暗殺とは、政治家・思想家・軍事指導者・財界人などの要人をひそかに狙ってターゲットを殺害することで、最初から殺害するべき対象は決められている。動機は、主に政治的、宗教的または実利的な理由により、要人殺害を密かに計画・立案し、不意打ちを狙って実行する殺人行為(謀殺)のことなので、無差別暗殺というようなことはあり得ない。

これらの定義からすれば、今回の銃撃行為は暗殺ではないのか。これをテロというのは、日本において政治家が殺害される事件が珍しいからではないか。もしテロだというのなら、山上容疑者は自身の政治的信条等を宣言するはずであるが、本人も言っているように政治的な恨みはないと言っていることからも、これはテロではない。ただ暗殺という言葉の暗いイメージを避けようと漠然とテロという言葉を使ったものと思われる。

山上容疑者の行為や発言から考えるにこれはただの殺人ではなく、要人暗殺事件と言うべきではないか。今後の報道を注視していくことにしよう。