GIGAZINEの倉庫を地上げ目的でなんの事前予告もなくショベルカーで解体された事件があって以来、そこに加担した関係者たちは何故やくざになったりヤクザと関わり合うようになったのかしばしば考える。
なんとなくは分かっているつもりであるが、はっきり認識するためにも本を読んでみようと思い立った。


題名はそのものズバリ「ヤクザになる理由」。


著者は、1970年福岡市生まれの元非行少年。紆余曲折して大学を卒業、犯罪社会学者となり自分の経験を生かしてこの様な本を書くに至る。最後の章に詳しいいきさつが書かれている。


「ヤクザになる理由」は多方面からその理由を追求しているが、この本をヤクザになろうとしている人が読むにはあまりにも漢字や難しい言葉が多すぎるのではないか。こんな本がスラスラ読めるならば彼らはヤクザになろうなんては思わなかったはずである。


この本は一体誰をターゲットにして書かれたものか。この著者の本で、「組長の娘 中川茂代の人生」のほうが、会話体でありあまり勉強をする機会に恵まれなかった人にも楽に読めるのではないか。
それでも他の本に比べるとわかりやすく総合的に書かれた良い本である。

以下、私なりにもう少しわかりやすい言葉に置き換えて書くことにする。


【ヤクザになる社会的な理由】
①めちゃくちゃの家庭に生まれれ育ち、規則を守ることが大切だとは思わなかった。
②学校では先生から嫌われ、アホなやつと見下されてきた。
③友達からは一目置かれることもあった。
④自分の居場所を非行集団に見つけ、そこでの地位向上を目指す。
⑤近所に暴力団関係者がいて世話になりかっこいいと思った。

人は生まれてくる場所も親も選ぶことは出来ない。彼らは生まれたときからハンディキャップがあった。親が直接子供に勉強を教えるということは一度もないことが共通の家庭環境であった。


【ヤクザになる個人的な理由】
①学校の成績が悪い。(勉強が大切だとは思わなかった。)
②中卒や高校中退者が多い。
③暴走族などの非行グループに属した経験がある。
④非行歴は早い時期から始まる。
⑤非行グループでの地位を大切に思う。

人はどの様な環境にあっても自分の価値を見出そうとし、プライドを守ろうとする。そのエネルギーが高いほどグループ内での地位を得ようとし続ける。


彼ら彼女たちは、家庭にあっても生き残りをかけた生活を小さい時からせねばならず、親の暴力や無関心にさらされていた。彼らの価値観は弱肉強食という「強いことはいいものだ」という信念を持ち、自分に適した居場所、受け入れてくれる社会を探した結果、反社会勢力に属し、今まで自分をバカにした奴らを見返してやろうとする。

ただ、一度ヤクザになるとやめても一般社会はそう簡単には受け入れてくれない。ヤクザをやめた人の就職率は約1%というデーターがある。

また、ヤクザに入ると見習い期間は想像を絶する厳しさに今の若い者では務まらないらしい。昼夜を問わずの親分のご奉公に疲れて覚せい剤に手を出し依存症になってしまうこともある。ヤクザになると銀行通帳も作れないし市町村の公共の利益からものけ者にされるので、子供は保育園には入れなかったりする。日本社会ではヤクザはますます生きづらくなっている。そのうえ幹部になるにもある程度の勉強ができなくてはならず、その確率は宝くじに当たるより低い。今日では映画に出てくるようなかっこいい任侠道などはない。幹部にもなれず年寄りになって肩たたきにあってヤクザをやめた後は、今までの不健康な生活のせいで多くの持病をかかえた生活保護者となり、孤独で哀れなさいごが待っているのである。妻も子供ももヤクザを嫌い去っていって相手にもしない。

それでもあなたはヤクザになりますか?子供もヤクザにしますか。

たとえヤクザにはならなくてもフロント企業としてヤクザの資金源を稼ぐために違法な仕事を生業とする生活を選びますか。

日本の刑務所は更生させてくれる所ではなく、罰を与えるところなのです。

いくら高級車に乗っていても今まで自分を馬鹿にしていた人たちを見返すことにはなりません。真面目に働いて社会参加ができるようになることこそ自分にも他人にも社会にも(子供にも)胸を張れることになるのです。