20世紀初頭のラジオのデザインは何故にか趣深い。
日野市で展示された古い電気製品の中からラジオのデザインの変遷を追ってみた。
一見すると無線機かと思ったが、これは一応ラジオである、このラジオはスピーカー部分はない。音はヘッドホンで聞く。音質は一体どのようなものだったのか。
ヘッドホンも何というクラシックなことか。木と金属で作られている。プラスチックなんてものとは無縁の機器。手作り満載。デザインとは無縁の代物。それでも木製のヘッドホン部分にデザイン性が垣間見られる。
スピーカー部分が独立しているラジオ。かなり古いような気がする。しかし、全体的な形は当時としてはモダンなデザインであったに違いない。美しい胸腺構造を持ったスピーカー部分だけでも置物としても見ることが出来る。
これもスピーカー部分が独立している。この形はラジオという知っている形とはすぐには結びつかない。しかし、デザインとしてはかなり凝っている。全体が調和を持っている。
昭和のはじめ頃のラジオ、木製でスピーカ一体型のラジオである。つまみは3つしかない。それでもデザインはなかなかのもの。
これもつまみは3つの木製のラジオ。スピーカー部分は布製である。デザイン的にはこの2つは曲線的なアールヌーボーの影響を受けている。ミゼット型と呼ばれスピーカ一体型となりやがて小型化が進んでいく。木製の箱と柔らかな曲線のデザインは今見ても人の心に優しい。
これも基本的には同じではあるがデザインは直線的なアールデコ調である。
やがて、ラジオが高級品であった時代から一般大衆の手に届く機器になっていった頃からそのデザイン性も家電としての大量生産品へと変化していったようである。
木製の部分は減っていき、型取りによるプラスチック形製品となっていく。ただ、デザイン的には家電の一分野を占めるようになっていったが、住居の近代化に伴いもはやアート的な部分は次第に影を潜め、新たに工業デザインとして新しいデザイン分野が出来るのである。工業デザインはメカとしての科学性を重視した形態美を追求する余り人間という生命体とはかなり相反するものが多かったが近年になってややその傾向も修正されるようになってきたとは言え、やはり趣深い昔のアート調のデザインとはかけ離れている。
これは私が長年愛用しているラジオ。
開くと何やら一昔前のメーターボックス風のデザイン。
この部分がラジオ。
この部分はカセットテープを入れて録音を聞く。今は使っていない。
中央部分はCDで音楽を聞く。
結構重いが、このレトロな感じが気に入ってずっと使っている。若い人でもこのデザインに興味を持ってみている様である。特に男性には受けている。
家電の場合、時々、機能よりもデザイン重視で買ってしまうが余り後悔したことはない。