バブル期以来の不動産向け融資は「冷たい爆弾」か。
金融機関が抱え込む「冷たい爆弾」とは、一体何どういうことなのか。
日銀は国内の銀行の不動産向け融資について、「過熱感がある」と指摘した。去年の年末時点の残高が、日本のGDP=国内総生産の14%を超えているというのがその理由である。
不動産向け融資の「過熱感」はバブル経済の終盤にあたる1990年の年末以来のことである。
不動産向け融資の加熱は、低金利が続き、企業向けの融資で収益を上げることができず、銀行が中小企業や個人に対し、不動産関連の貸し出しにウエイトを置き始めたからである。
日銀の「貸出先別貸出金」統計によると国内銀行の不動産業向け融資の残高は2015年末から4年連続でバブル期を上回り過去最高水準を更新している。国内総生産(GDP)に対する貸出残高の比率は14.1%に達し、日銀は過去の貸し出しの統計から見て過熱していると発表。
ところが、報告書によると不動産価格には過熱感はみられず、不動産市場全体としても過熱状態ではないとしている。この点がバブル期と異なっている点である。バブルの頃は、不動産価格が天井知らずに上昇し、金融機関の融資もそれに連動していき、相互影響のもとに加熱していったのである。今回の場合は、不動産価格は殆ど横ばいであるにもかかわらず、不動産の融資のみが加熱しているのである。
その結果、不動産向けの融資の割合が高い金融機関ほど、経営の健全性を示す自己資本比率が低くなる傾向にある事がわかってきた。
人口や世帯が減少する中、不動産融資には空室の増加や賃料が下落するリスクがある。日銀は金融機関に対し、不動産が過大な投資になるリスクについて注意を促している。
目先の利益に目がくらみ、リスクの多い不動産に融資を増やし続けている金融機関は、まだ大丈夫だという思いで、「冷たい爆弾」を抱え込んでいるが、その爆弾の中心部はひょっとすると臨界点に達しようとしているのではないか。
不動産融資が地域性や人間関係に重点が置かれる地銀や信用金庫なども例外ではない。
ドライアイスを入れたコップに水をいれると沸騰しているように見える。現在の不動産向け融資の加熱はこの現象に似ている。