今日の大ニュースは、「白血病の治療に使われる造血幹細胞を増やすための培養液の成分としてPVAがアルブミンの代替物質として有用であることがわかった。PVAは液状のりの材料として安価かつ高品質なグレードでで大量生産されているため、コスト削減につながると期待されている。」ということである。


PVAは、作品制作のバインダ-の一成分としてよく使うので私のアトリエにはいつも置かれている。PVA,CMC,アルギン酸ソーダーなどは同じ様な使い方をしているが、それぞれの特性によって使い分けをしている。このPVAが造血幹細胞を増やすための培養液の成分となると知って感無量である。私自身、血液がんになったので、造血幹細胞移植については人ごとではないのである。

PVAは、示性式 (−CH2CH(OH)−)n でポリビニルアルコール (polyvinyl alcohol)と呼ばれる合成樹脂の一種で、親水性が高く弱酸性で、温水に可溶という特徴を持つ。 別名をポバール(POVAL)とも呼ばれ、クラレが1958年に世界で初めて事業化した機能性樹脂である。このPVA、液状のり(「アラビックヤマト」や「オーグルー」)や洗濯のり、郵便切手の裏糊としても使われている。


この研究は東京大学とスタンフォード大学の研究チームが共同で行ったものであり、「PVAは血清アルブミンの機能を代替し、細胞老化を抑制することで造血幹細胞の増幅可能」、「PVAを用いた造血幹細胞の増幅培養システムは1つの造血幹細胞からでも多くの個体へ骨髄移植が可能」、「ドナーからごくわずかな造血幹細胞を得てその得られた造血幹細胞を増幅することで、複数の患者へ移植可能な造血幹細胞が準備できる」などが発表されているが、患者にとって一番の朗報は「骨髄破壊的な処置をしない安全な造血幹細胞移植モデルの確立」ということである。

血液がんの患者の一人として最も注目したのは「今回見出された増幅培養系を用いることで、50個という少ない造血幹細胞から充分量の造血幹細胞を得ることに成功し、骨髄破壊的な処置を用いない安全で容易な造血幹細胞の移植法を新たに発見しました。」という部分である。一度の多量の造血幹細胞を体内に入れることによって可能となるのである。

「移植前処置では、大量の抗がん剤投与や全身放射線治療などにより、通常の化学療法や放射線治療よりも強い副作用が起こる。一時的に白血球が極度に減少するため、感染が起こりやすい状態となる。同時に赤血球や血小板も減少するため、貧血や出血を予防するために、適宜、赤血球/血小板輸血を行う。副作用として、口内炎、脱毛、食思不振、嘔気・嘔吐、下痢などが高頻度に起こり、肝臓、腎臓、心臓、肺、中枢神経などの重要な臓器に障害が起こることもあり、いずれの合併症も重症化した場合には命に関わることがある。」患者にとっては耐え難い苦痛である。単なる抗がん剤の苦しみを超えるものがあるという。故に高齢者や年少者には、助かるかもしれないこの造血幹細胞移植を実施することができなかった。しかし、この新しい「骨髄破壊的な移植前処置をしない安全な造血幹細胞移植モデル」は、多くの血液がん患者に希望を与えることに間違いない。