Tシャツなんかに自作の絵を描きたいと思っても、ササッと絵を描ける人はいいが、そうでない人は1度原画を布にトレースしなければならない。刺繍なんかの時も原画をトレースしなければならない。紙にトレースするのや比較的たやすいが、布の場合はずれたり洗濯したりもするので大変である。そこで、簡単なズボラ技法を発見したのである。


まず、モノクロ専用のコピー機で濃い目に原画をコピーする。カラーコピーのモノクロコピーは転写しにくいものが多いので注意。ジェットプリンターは全く転写できない。トナー式のモノクロコピー機でなくてはならない。


今回は試しにこの般若の顔を作例にする。


布を用意する。今回は白いTシャツがなかったので、白い布を使った。この技法は濃い布には出来ないのが難点である。


コピーした面を下にしてトレースしたい場所にセロテープで止める。ただ、注意しなければならないのは左右逆転するので、文字の場合なんかは鏡面コピーを必要とする。コピー専門店に行くか、パソコンでフォトショップのソフトを使って反転させると良い。原理はコピーのトナーの中に熱融着性のレジンという成分が入っているので、そのトナーを布に熱圧着するという方法である。このトナーをアセトンなどの溶剤で溶かして転写する方法もあるが、布を痛めるし臭いし健康にも悪い。


アイロンは蒸気穴のない昔のアイロンが良い。電気屋さんで注文すれば手に入る。


温度は布によって変えるが、今回は木綿なので高温に調節する。温度は高いほうがよく転写できる。


体重をかけてゆっくり繰り返してアイロンを当ててゆく。もともと、これぐらいでコピー紙の絵を転写しようというのが無理な話なのであるが、無理を承知で力技で転写するのである。熱と圧力だけのシンプル技法である。


これが出来上がり。薄くではあるが細かいところまでトレースされている。この薄いトレース跡をなぞったり色を塗ったりすれば自作の画が布に描けるのである。


この水性のアクアテックの顔料インクが簡単に布に絵を描くのには適している。選択にも耐える。ただ、薄い色の黄色と水色は水分が多いせいかにじみが強い。


下書きが薄いので出来上がりには差し障りがない。布専用のアクリル絵の具を使っても良いが種類によっては洗濯に耐えられないものもある。布に絵を描く場合は洗濯に耐えられるか3回ぐらい実験をしてみる必要がある。


出来上がり。たった1点だけのオリジナル作品の場合ならこの方法が楽ちんである。近頃の布には防水や防汚の処理がされている場合があるので一度洗濯してから絵を描いたほうが絵の具の密着度が高い。夏休みの自由研究にいかがかな。もっといろいろな布にやってデータを取るのも面白いかな。コピーのメーカ-によっても違うはずである。


最後に仏画の線描き(白描画)のコピーを布に熱圧着してみた。


部分的に濃薄はあるが、これで十分な下書きの線画として使うことができる。熱プレス機の機械を使うともっと均一に綺麗にできるが、誰にでもできる技法ではないので敢えてアイロンを使ってみたのである。