ショベルカーで建物をなんの予告もなく破壊されて以降、色んな本を読み漁った。その中でもこの「暴力団フロント企業ーその実態と対策」はよくわかりやすく書かれていた。以下、この本を読んで判ったことを書いていく。

暴力団のフロント企業なるものが出来たのは、バブル崩壊後である。バブル期の地上げに大企業が汚い仕事を裏社会の暴力団に依頼してやらせたが、バブル崩壊後、企業は彼ら暴力団を使い捨てにしたのである。


しかし、一度表社会で仕事をした裏社会の住人たちは、従来のしのぎ稼業以外にも稼ぎのいい仕事があることを知る。暴対法の網の目をかいくぐるようにして登場したのが暴力団のフロント企業である。羊の皮をかぶったオオカミさんである。

一見した所、〇〇企業とかカタカナ文字の洒落た名前の名刺を持ち歩き一般企業と見分けはつかない。


そもそも日本では、暴力団が看板を上げて営業している異常性は、海外ではあまりお目にかからないのである。マフィアが看板を上げて営業することはない。要するに暴対法とバブル崩壊は日本の暴力団のマフィアかを促したと言える。


フロント企業とは、暴力団の出先企業であり、暴力団組織の維持、運営に積極的に関与しているものである。暴力団の構成員自身が合法企業の形態を取る場合、「フロント企業」という新しい用語が登場したのであるが、警察は民事不介入の法を盾にされるので昨今では「暴力団関係企業」という用語を使用するようになってきた。近時、警察としても、フロント企業対策として「民事積極介入政策」をとることを宣言したという。

しかし、今回のGIGAZINEの事案に於いては西淀川警察にまでは行き届いていないようである。警察は民事不介入の立場を堅持しようとしたからである。


フロント企業の外観をとっている限り合法ではあるが、限りなく黒に近いグレーゾーンで仕事をしているので刑事事件になることはない。刑事事件にならなければ暴力団本部の上層部に迷惑はかからないのである。
同じことなら合法的に真っ白な経営をすればと思われる方もいようが、それでは膨大な利潤を上げることが出来ないからである。


上の目次に見られるようにはそう簡単にフロント企業に対する防御や対策がなされているわけではない。

何しろフロント企業の実態を行政や警察が把握できていないからである。NETで検索しても数えるほどしか書いていない。


事件に関わった弁護士達も個人情報保護法に阻まれて情報を共有しにくいという現状がある。

暴力団の方でも新しいIT社会に適応した者たちは生き残り勢力を広げている。


現在ではNETビジネスに乗り出して、直接一般市民と会うこともなくグレーゾーンビジネスで多大な利潤を上げているフロント企業も多い。


フロント企業対策の一番はお金の流れを掌握することであるが、司法と税務署との連携が殆どないことが問題となっている。


金融機関はフロント企業と取引しないという建前ではあってもその実態を把握していないのが現状である。

今回の地上げで私たちが経験したところによると、バブル期の人脈はいまだに生きていてフロント企業と金融機関を裏でつないでいる。


警察にも見分けられないフロント企業を一般市民に見分けられるはずがないということがよく判った。


いろんな例が書いてあるが、要するに相手がフロント企業と気がついたときにはもう遅いということである。その時は即迷わず弁護士を雇って警察に駆け込むことである。あれこれ迷っているうちに事態はますます悪化していく。


暴力団関連企業に関する法令は一杯あるがその法を遵守するはずの警察や検察庁が及び腰では有名無実の代物でしかない。

GIGAZINE編集長が被った地上げ被害の件を見ても、力になってくれるはずの警察が民事不介入の立場をとって目の前で建物が壊されていても逮捕しようとはしなかったのである。警察にとってフロント企業の証明には時間とお金がかかる上に、思ったような結果は得られないのなら見て見ぬ振りをするに越したことはないというところだろうか。

相手がフロント企業であることが判った時点ですべての契約事項は無効となるが、その「フロント企業である「という難解な証明はどのようにするのかが一番の問題であるが、近頃のフロント企業は賢くなってそう簡単には尻尾を出さない。

一般素人でも判別できる方法は、「反社の誓約書を書かせてみる」か「企業の登記簿を取り寄せる」とか、その「怪しい企業が入っているビルについて調べてみる」ことで大体の見当はつく。

初めての商取引にはくれぐれも注意をし疑ってかかることであるし、就職する場合もよく相手の会社について調べることである。この本はそういう意味でも一度は読んでみる価値はあると思う。