アメリカ国務省は日本に対し渡航禁止勧告を出した。しかし、日本政府はオリンピックを「人命ラースト」で絶対やるという固い決意をしているように見える。
あちこちサイトを読んでいると、オリンピック中止の権利はすべてIOCが持っているということが分かったのである。オリンピックの開催都市契約なるものを初めて読んで愕然とした。

以下一部を抜粋
【開催都市契約】第32回オリンピック競技大会(2020/東京)
解除66.契約の解除a)
IOCは、以下のいずれかに該当する場合、本契約を解除して、開催都市における本大会を中止する権利を有する。
理由の如何を問わずIOCによる本大会の中止またはIOCによる本契約の解除が生じた場合、開催都市、NOCおよびOCOGは、ここにいかなる形態の補償、損害賠償またはその他の賠償またはいかなる種類の救済に対する請求および権利を放棄し、また、ここに、当該中止または解除に関するいかなる第三者からの請求、訴訟、または判断からIOC被賠償者を補償し、無害に保つものとする。OCOGが契約を締結している全ての相手方に本条の内容を通知するのはOCOGの責任である。


開催契約を解除し、開催を中止する権利はIOCのみにあるということ。オリンピック大会はIOCの「独占的財産」で、オリンピックの「所有者」として、開催契約を解除できるのはIOCだけなのだ。この開催都市契約によると、もし日本が一方的に契約を解除する場合、それによるすべてのリスクや損失は開催国の組織委員会のものとなるというのである。
こんな一方的な開催契約があったとは今初めて知った。江戸時代末期の下関不平等条約を思い出す。


パンデミックが世界に広がっている現状、オリンピック憲章には、「選手のための医療と健康対策を促進し支援する」、「安全なスポーツを奨励」という規定があるので、日本政府はオリンピックを中止してもいいのではないかと思うのだが、これとても開催都市契約の下では無力である。

何故なら、開催都市契約には、次のような条項がある。

「81.優先順位本契約の解釈や履行に関して、矛盾や齟齬が生じた場合には、①現在の本契約、②オリンピック憲章、③適用法の順にこれらを適用することによって解決する。」

開催都市契約には、オリンピック憲章よりこの開催都市契約の方が優先されると書いてあるのである。本末転倒とはこのことである。
IOCとしては延期はあっても中止という選択肢はないというのは、オリンピックにかかわる利権問題が裏で複雑に絡み合っているからであろう。


この開催都市開催契約を読むと、恐ろしいほど、金、金、金である。もうこんなオリンピックはこれを機会に止める潮時ではないのか。オリンピックは国家のメダル獲得合戦ではない。国ではなく個人にその栄光を与えるのがその本来の姿である。このコロナのパンデミックもいつまで続くのかわからない。世界の行き来がグローバル化した現在、感染症は地球規模で拡大する。パンデミックよりオリンピックを優先させるというのは間違っている。多くの人々の犠牲の上に無理やり開催するオリンピックというものの矛盾点をもう一度じっくり考えるべきである。

IOCはギリシャに自前の競技場を建ててオリンピック大会を開くべきではないか。