「外交官免税ガソリン取扱給油所」ってなに?
昨今、ガソリンの値段が馬鹿高くなっている。ガソリンスタンドの前を通るたびにガソリン価格を見てしまう。
ところが、信号で止まったところで、ガソリンスタンドらしからぬ給油所を見つけた。ガソリンスタンドなのにガソリン価格が書いていない。あれっと思ってよく見てみると、「外交官免税ガソリン取扱給油所」と書かれている。外交官はガソリンの税金が免除されるらしい。早速スマホを出して、ガソリンの税率を調べる。
「ガソリン税とは、ガソリンに課される揮発油税と地方揮発油税の総称」ということで、2020年当時では
ガソリン税(53.8円)=揮発油税(48.6円)+地方揮発油税(5.2円)ということになるが、実際はさらに消費税が付く。
外交官は、このうちの50円前後のガソリン税が免除されるらしい。1リットル当たり170円とすると120円ということなのか。いいなぁ~。
国税局のホームページには、「第9節外国公館等用免税」の第88条に詳細が書かれている。
「第9節 外国公館等用免税
第88条 租特法第90条の3第1項第1号《移出に係る揮発油の外国公館等用免税》に規定する「大使館等」とは、次に掲げるものをいう。(平元間消5-13改正)
(1) 大使館及び公使館
(2) 領事館(名誉領事館を除く。)
(3) 外国政府の代表部及びその出張所
(4) 大使館、公使館又は領事館に準ずるものとして日本国政府が認める外国政府等の機関」
「租特法第90条の3に規定する「自動車」とは、道路運送車両法第2条第1項《定義》に規定する自動車又は原動機付自転車で、大使館等の公用車又は大使等の自用車として外務省に登録し、「外」、「領」又は「代」の登録番号票の交付を受けているものをいう。」
「外」と「領」はそれぞれ外交団、領事団が、「代」は外国代表部や国際機関が使うクルマのこと。
外交官ナンバーのクルマは不可侵権と治外法権が認められているが、その「外交特権」を背景に、駐車違反やその違反金の踏み倒しなどが問題となってきた。そこで、2021年から国は、違反金などが未納の場合にガソリン税の免税措置を講じない対策に踏み切っている。
この特殊な「外交官免税ガソリン取扱給油所」は、法で定める条件を満たす必要がある。
「(給油所の指定及び取消し)
第93条 租特法第90条の3第4項《移出に係る外国公館等用免税》に定める指定給油所の指定は、次に掲げるすべての条件を満たしている場合に限りこれを行うものとする。(平元間消5-13改正)
(1) 登録車の燃料に供する揮発油を毎月継続して販売する見込みがあること。
(2) 指定を受けようとする給油所が、大使館等の周辺にある等登録車の給油に便利な場所にあること。
(3) 大使館等及び大使等に揮発油を販売するのに適する設備を有し、かつ、それに適する従業員を配置していること。
(4) 申請者が申請の日以前の1年間に、租特法第90条の3第5項の規定により指定の取消しを受けたこと及び国税に関する法律の規定に違反して検挙されたことがないこと。
(5) 資力及び信用が十分であること。
(6) 前各号のほか取締り上特に不適当であると認められる事情がないこと。」
そういえばこの給油所のあたりには各国の大使館が多くある。
(指定給油所から購入する場合の免税)
「第92条 大使館等及び大使等が、租特法第90条の3第1項第3号《移出に係る揮発油の外国公館等用免税》の規定により、その登録車の燃料に供する揮発油を、指定給油所から購入する場合の揮発油税の免税手続は、次による。(平元間消5-13改正)
(1) 大使館等から外務省に申請して外交官等用揮発油購入票(以下「購入票」という。)の交付を受け、大使館等及び大使等が揮発油を購入する際には、購入票に添付されている外交官等用揮発油購入証明を指定給油所に提示し、購入票に3枚複写で購入する揮発油の数量等を記載し、かつ、署名した上指定給油所に提出する。
(2) 指定給油所は、購入票の提出があつたときは、購入数量、登録車番号及び署名を確かめ、購入票に制限数量(租特規則第39条の3《外国公館等用免税揮発油の数量》に規定する数量)の残数量及び給油所名を記載し、その2枚(指定給油所保存用及び税務署提出用)と引換えに税抜価格で揮発油を販売する。
(3) 指定給油所は、税抜価格で販売した揮発油について毎月分を取りまとめ、翌月の10日までに前号の購入票を所轄税務署長に提出してその販売証明書の交付を受け、更にこれを製造者に提出して税抜価格で揮発油を購入する。
(4) 製造者は、前号の販売証明書を提出して所轄税務署長の免税の承認を受ける。
(5) 使用済みの購入票は、大使館等から外務省に返納する。」
免税されるにはいろいろ手続きがいるのである。
ただこの税抜きガソリンをすべて使ったという証明は必要ないのか。ガソリン容器に入れてもらえば右から左へ転売して利潤を得ることも可能であるが、このような事案を防ぐ法律は決められているのか。よくよく考えてみると、外交官特権を悪用すればかなりのことができるのではないか。
しかし、治外法権の外交官特権があるからこそ、亡命などの問題を処理できるのであろう。