どこの家庭にも大工道具の一つや二つはあるものである。しかし、我が家にはプロ並みの道具がそろっている。親子3代で買い集めたものである。私の父はその初代で、工具を買うのが趣味かと思うほど数十年にわたって買い集め、大型プレハブ倉庫中を工具で満たしてしまった。主に、庭の植木を植え替えるためのもので、植木市で植木を買ってきてはあっちへこっちへと植え替えていた。竹藪に生える筍堀の道具や柿や柚子の木などを世話するネットなど、柵に穴をあけるボール盤、電動鋸などまあ色んなものがある。
2代目が私、作品作成の為なら考えられるあらゆるものを買ったような気がする。筆、硯、墨擦り器、絵の具を作るすり鉢が特大から特小まで、電子計り器、コンプレッサー、プレス機。ろ過機、蒸留器、製版機、掃除機各種、紫外線ランプ、文房具各種、大型プリンター、コピー機、ガラス器などアクセサリ-制作道具一式、照明器具、デジカメ各種、録音機、プロ用PCを2年ごとに買い替えなど、このまま書いていたらきりがないのでこれ位で留めることにする。
3代目が私の息子、次男である。電子機器とそのための工具類が倉庫と自宅の10畳の部屋に所狭しと積み重なっている。私には何に使うのか得体のしれないものがほとんどである。金槌やペンチだけでも大中小10段階ぐらいそろえている。ハンダ付の道具が又多い。3Dプリンターも多い。いつか、きっと必要になるからと言っては買う。特売だと言って買う。整理するためのケースも増えてくる。棚も増える。‥‥いつの間にか部屋いっぱいになる。

遺伝子とは本当に恐ろしいものである。この3人に共通する身体的特徴は手足が大きい事と、絵を描くのが上手である事。暇があれば何かごそごそして、もの作りに励んでいる。観光などには全く興味はない。工具屋や材料屋めぐりが好きである。動物が好きである。友達は少ない。ほとんどいない。‥‥数え上げればきりがない。長所も短所もよく似ている。

この親子3代で買い集めた工具は、時間とともに錆びてくる。


錆び着いた工具を集めて次から次へと錆び落としをしてくれたのが我が息子である。5月の連休中、錆落としの材料集めとさび落としに費やしていた。息子の部屋やベランダからグラインダーの音が鳴り響いていた。特に錆の塊になって元の金属の色が見えなくなっていたものをピカピカにして自慢そうに見せてくれたのこれである。元の状態も写真に撮っていればよかった。私の父もきっとあの世で喜んでいることだと思う。


息子の労に報いるために記念写真を撮っておくことにした。工具を集めて作った「工具ロボ」である。これ以外にも色んな工具を磨いてくれたが、特にこれらがまっ茶色でひどかった。何に似ているか例えてみれば、野ざらしになったウクライナ軍にやられたロシアの戦車のさび色である。

このロボ、よく見てみると、なんだか息子に似ている。確かにこんな感じの人間ロボである。