コロナ軽症や無症状でも脳神経をやられる後遺症は恐ろしい。
後遺症の長期化傾向はオミクロン株でも同じで、症状の重さもデルタ株と変わらない。寝たきりになったり、ぜんそくのような症状が出たりすることもある」と。「感染時は軽症だから後遺症も大したことはないと油断してはいけない。特に感染後の2カ月間は無理をしてはいけない」
東京・世田谷区が行った新型コロナの後遺症に関するアンケートで、新型コロナは無症状でもその3割には後遺症は出たことがわかり、専門家は「新型コロナで無症状でもけん怠感や嗅覚障害など後遺症が出るケースが多くあり注意が必要だ」と指摘している。
中年層(30代から50代)が他の年代より多い傾向は、診断から半年後、1年後も同様であった。症状は倦怠感が最多で、呼吸困難や思考力低下、筋力低下も目立った。尚、女性の方が後遺症は多い。
【脳内の炎症や、神経障害】
肺に新型コロナを感染させた軽症のマウスを調べたところ、軽症なのに脳内の炎症が7週間続いた。
感染から7日後と7週間後に、炎症を引き起こす物質の一つ「サイトカイン」の量をそれぞれ調べたところ、肺だけでなく血液と脳脊髄(せきずい)液で上昇していた。つまり、新型コロナに感染した肺で生じたサイトカインが血液によって脳に運ばれ、炎症を引き起こした可能性がある。
脳の神経細胞を調べると神経細胞同士が情報を伝達する際、その経路を作り出す物質の約3分の1が消失。情報伝達に異常が生じているのである。記憶力などをつかさどる「海馬」では神経の再生が滞っていたという。
「新型コロナの感染後に死亡した患者の脳でも、サイトカインが上昇していた。もし人間でもマウスのような変化が起きていれば、さまざまな症状が出る恐れがある」ということである。
【血流の低下】
血圧や体温、内臓の働きなどを調整する自律神経の働きを妨げる恐れのある「自己抗体」が生じていることが判明した。ウイルスを攻撃する「抗体」だけでなく自己抗体もできてしまい、それが自律神経に悪さをしたり脳の血流を乱したりする可能性があるという。画像検査で脳血流の流れがかなり落ちていたら、頭は働かないだろうということである。
【対処法】
脳血流が低下した患者には脳の代謝を良くする薬が使われた。免疫系の異常が疑われる患者には、免疫の働きや炎症を抑えるステロイド薬(副腎皮質ホルモン)が体調を見ながら少量投与されている。
既存の薬を後遺症の治療に使えないのか探る動きもある。新型コロナの後遺症と症状が重なる神経免疫系疾患「筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群(ME・CFS)」の治療薬である。この疾患は突然発症することが多く、ウイルスや細菌の感染が発症に関わると考えられている。03年にカナダや香港で「重症急性呼吸器症候群(SARS)」のウイルスが流行した時、感染者がME・CFSも発症したと報告されている。
オミクロンのコロナにかかっても重症にはならないと軽く見ていたら、その後遺症で苦しむことになる。3回目のワクチンも受けて感染症対策は引き続き実行する必要がある。もしコロナにかかってしまったら、症状が落ち着いても無理をしてはいけない。体力や免疫力が回復するまで養生するべきである。