憲法改正の問題が、統一教会問題でかすんできているが、日本国民にとっては比較にならないほど大切な問題である。もし問題になるとすれば、統一教会がこの憲法改正の主役となる時の政権を操っていることだろう。

第20条現行憲法「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」を、
改憲草案「国は、いかなる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない。」に変え、
「宗教団体による政治上の権力を行使」が可能にすることで、改憲案20条3項では「社会的礼儀又は習俗的行為の範囲を超えないもの」については国による宗教活動が可能になる。 そして改憲案89条では上記の行為の為に国から宗教団体に国の公金の支出も可能になり、戦前、国家神道に特権的な地位が与えられ軍国主義が進んだ経緯を踏まえて 日本国憲法に盛り込まれた政教分離原則が緩和されることになる。


では、憲法と法律はどのように違うのか。

・憲法は、個人の尊厳を最大の価値とし、基本的人権を確保するために、「国家を縛ること」を目的としている。
・法律は、国会(衆議院と参議院)で成立するものであるが、法律制定の目的の根底には、国家が社会秩序の維持のために、人々の間の権利自由の調整のために、特定の個人の権利自由を制約するものである。

・憲法は 国民が国家を縛る(コントロールする)
・法律は 国家が国民を縛る (コントロールする)
決して、国家が国家の利益のために、ましてや一部の政治家や企業のために法律があるわけではない。

どのような法令であっても憲法が一番上にあるので、憲法に違反したルールを作ることは出来ない。
憲法の下にあるのが法律である。
国会で決めることが出来る法が法律であり、違反した場合は罰則などがある。
他にも法律の下には政令や省令といったものがあり、中には条例といった地方議会が定めたそこでしか通用しないルールもあるので注意が必要。

自民党の改憲草案で憲法はどう変わる?
このサイトが最もよく分かるように書かれてあるので、法律に疎い私のような人にとっては大変ありがたい。以下、このサイトを参考に簡単にまとめてみた。


『現行憲法では人権が制約されるのは人権同士が衝突した場合のみでしたが、 改憲案では国益に反する場合にも人権が制限されます。
また、国際人権規約では委員会が公共の福祉で人権が制約される範囲が必要以上に広がらないよう法律に明記することを求めていますが、 改憲案では制約の範囲が広がっています。
基本的人権よりも国益が優先され、全体主義や軍国主義が加速する形となります。
そして、13条では人権の尊重が「個人として」から「人として」に変更されています。 これは個人の尊重は憲法で保証されず集団の人としてのみ認識される事を示しており、憲法が多様性を否定する事に繋がります。

*「公共の福祉」では例えば「報道の自由」と「プライバシー権(人格権)」が相反した場合、 一般人にはプライバシー権が、国会議員などの公人には報道の自由が優先されます。 つまり、人権を制限出来るのは人権のみとなります。
*「公益及び公の秩序」では、人権同士の相反が無くても国益に反すると判断されると「報道の自由」などの人権が制限されます。 つまり、人権が国家によって制限されます。』


『後述する改憲草案21条で表現の自由やそこから派生する権利の報道の自由が国益に反する場合に制限されるため、 国益に反すると判断された場合に国会議員などの公人の実名報道が出来なくなる可能性があります。 これにより権力行使に対する監視というマスコミの使命は果たせななくなります。
自民党の改憲草案Q&Aではこの条文をプライバシーに関する権利と説明していますが、 実際の条文は「何人も〜ならない」と権利ではなく国民の義務として記載されており、 「何人」とは「私人」を指しているため国家による個人情報収集は規制していません。』


『自民党の改憲草案では新たに「家族、婚姻等に関する基本原則」が追加されました。
前文にも同様の家族の助け合いの記載があり、 これを根拠に家族がいる人の生活保護を拒否する事が合憲になります。
世界人権宣言16条3項に「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。」とありますが、 「互いに助け合わなければならない。」との記述はありません。』


『現行憲法において「地方自治の本旨」は「団体自治」と「住民自治」から構成されますが、 改憲草案では地方分権的要素である「団体自治」が制限され中央政府の国政に対する抑止力としての地方自治体の機能を減衰させました。 具体的には行政は「住民に身近な行政」の自治のみが改憲草案92条で保証され、 国政に関わる行政の内容は94条の改正により地方自治体が権能を有しなくなりました。 これにより例えばオスプレイ反対決議など国政とも関わる地方行政の決定は出来なくなります。 また、地方自治体の公有財産の管理の権能も削除され、一方で改憲草案96条の3にて地方自治の財政健全化が定められ、 地方行政による福祉以上の地方税を収める事が必要になりました。

「団体自治」とは、自治体が国の下部組織ではなく独立した団体として自己の責任で行政などを処理する事で、地方分権の役割を果たします。
「住民自治」とは、地域の政治や行政を地域住民の意志に基づいて処理する事で、国民主権の役割を果たします。』


『自民党の改憲草案では新たに国防軍に関する記載が追加されました。 第二章の章題は「戦争の放棄」から「安全保障」に変更されています。
国防軍は「国際的に協調して行われる活動」を行う事ができると記載され、「集団的自衛権」を認める内容になります。 これにより米軍などの同盟国の軍隊が攻撃された際に国防軍が一緒に戦って防衛する事が可能になります。 また、国防軍に軍事審判所の設置も明記され、軍人等の職務の遂行上の犯罪などが通常の裁判所ではなく軍事審判所で裁かれるようになります。
そして9条の3には「国民と協力して」とあり改憲案前文3段と共に国民に「国防義務」を課しています。 18条2項では「意に反する苦役」に服されない事を定めていますが、それは12条で国益に反しない場合に限定しており、 国防を最大の国益として前述の「国防義務」と共に「徴兵制」を合憲とする事が可能になっています。
アメリカの情報公開により、戦争時に自衛隊が米軍の指揮下に入る事が日米合同委員会で合意されている事が判明していますが、 国防軍も同様の合意で実質的に米軍の下部組織となる可能性があります。

「日米合同委員会」とは日米安全保障条約第6条に基づく日米地位協定の第25条に規定された日本の官僚と米軍の会議。 ここでの合意内容は機密として国民に公開されないが、 後述する統治行為論により合意内容は憲法より上位の存在となる。 それによって、ここでの各種合意内容が根拠となり米軍には国内法が適用出来ない。』


『奴隷的拘束に対して条件が追加され、「政治的な」または「軍事的な」拘束が可能になります。 また、36条の拷問の禁止から「絶対に」の文言が削除され、 前述の12条改正と合わせて国益や社会秩序のためであれば政治的または軍事的な拷問が可能になります。』


要するに、自民党の憲法改正によって、どのような国家になることを目指しているのかと言うと、戦前の大日本帝国憲法下による国家と社会秩序である。支配階級にとってやりたい放題の体制である。現在の世界の中では、北朝鮮の国家体制こそが自民党の理想とするところで、それを覆い隠すために民主主義国家という皮を被っている。あのヒットラーのナチス国家でさえ民主主義を掲げてきたのである。

漠然と考えている民主主義という言葉こそ恐ろしいものはない。カッコつきの民主主義なら、周りの独裁国家を見ればよい。あの中国の習近平の言う「わが国独自の民主主義」という言葉こそその見本である。

民主主義の一番の弊害は、多数決である。民衆を洗脳すればありとあらゆることが多数決の原則によって可能になる。お金の力で一度政権をとれば、その権力を使いカッコつき民主主義の下で自分たちにとって都合の良い法律を作ることができる。その法律を規制しているのが憲法である。憲法は法の番人である。この憲法を改正したり新しく作ったりすることは時の政権の夢であった。ウクライナ侵攻の悲惨な状況が追い風となって、今なら憲法改正も可能だと自民党はイケイケ気分であった。

そこに、統一教会の実体が報道のトップに躍り出て、自民党はこれを何とかしようと必死である。選挙の集票の為にばらまいた地雷が今となっては回収の方法もままならず、何時足元で爆発するのかと不安におびえているのではないか。

自民党の大親分亡き後の党の混乱ぶりをよく見ることである。今まで雲上人達であった支配階級の見えない世界が雲の間から見え始めた。その原因は、ほんの少しだけ、三権分立の幻想が元に戻り始めたからかもしれない。


参議院のサイトにはその三権分離がいかに大切かを説明してある。

『国の権力を立法権・行政権・司法権の三つに分ける仕組みを三権分立といいます。
これは、国の権力が一つの機関に集中すると濫用されるおそれがあるため、三つの権力が互いに抑制し、均衡を保つことによって権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障しようとする考え方です。

日本国憲法も三権分立をとっています。
国会は、法律をつくったり、変えたり、廃止したりする「立法権」を、内閣は、国会が決めた法律や予算に基づいて実際の行政を行う「行政権」を、裁判所は、人々の争いごとや犯罪を憲法や法律に基づいて裁く「司法権」を担当し、互いに仕事を行っています。
日本の三権分立は、国会が内閣総理大臣を指名し、国会の信任のもとに内閣が成り立つ仕組み = 議院内閣制となっていますので、国会と内閣の結びつきが深いのが特徴です。』

現在、日本が世界に誇れる一番のものは「日本国憲法」である。

世界中がこの我が国の憲法と同じ趣旨のもとに憲法を作れば世界平和の夢も可能になるかもしれない。

もう一つ、日本が世界一のものがある。それは、「世界一、愛国心のない国民だということである。」

自民党は、日本の国民を愛国心のある国民に変え、日本国憲法のあちこちを変え、新しく付け加え、世界の支配者がうらやむような国家にしたいのである。