「黒いカラスはどうして夏には熱中症ににならないのか」と夏中頭を悩ませた結果。
カラスルックとはよく言ったものであるが、黒でカラーコーディネイトされたファッションである。今では夏でもカラスルックの人を見かけるし、日傘も黒い傘が多い。黒は日光を吸収しやすいので、黒の日傘と言うのは何か理屈に合わないような気もする。しかし、黒の日傘は光を吸収して紫外線をカットしていて、白の日傘と比べるとカット率が高いと言われているのである。 紫外線は空からだけでなく、地面や壁からの照り返しもあり、地面から日傘の内側に跳ね返ってくる紫外線を顔へ再反射してしまうことになる。黒い日傘は、傘自体が熱を持ってしまう場合があるので、理想的には、外側は白く内側は黒く加工したものがベストということになるらしい。
しかし、カラスは日焼けを気にしているわけでない。
黒いカラスは日光を吸収しやすいので、夏の暑さでよく熱中症にならないものだと感心する。 夏場のカラスは翼を広げて放熱したり、木陰でじっと動かず口を半開きにして口の中で気化熱を利用して暑さをしのいでいる姿が見ていると、カラスにとっても夏の暑さは耐え難いもののようである。
それ故、カラスは夏の日差しが強い時間はほとんど姿を見せない。 暑い日の活動は早朝と夕方だけである。
鳥は皮膚に汗腺を持たず人間ほどの体温調節能力は無いので、カラスは30℃を超えると口を開けることが多くなり、 36℃を超えると口は開けっぱなしとなる。犬と同じように口を開け呼吸を早くすることで、 気化熱により体温を調節しているのである。
鳥類は体温が42℃と高く、大多数の鳥類は30℃前後の環境でも問題なく生活することができるらしい。
しかし、鳥も人間と同じように熱中症(熱射病)のような症状に陥ることがあるという。鳥が口をパクパクさせて苦しそうに呼吸をしていたり、翼を広げるしぐさを繰り返したり(体温調節をしようとしている)、ふらふらしたりしているのは、要注意のサインである。熱中症になった場合の症状としては、口を開けて呼吸したり、翼や足を広げて体温を下げようとしたりする。重度の脱水症状から虚脱、痙攣を起こし死亡してしまうこともある。
全身が黒いカラスは普通の鳥より熱中症にかかり易いのかと言うとそうでもないらしい。調べてみると、その理由は黒体輻射という物理現象によるということが分かった
上記のサイトを参考にして分かったことを書き出してみた。
・黒の色は熱を吸収しやすい反面、放熱もしやすい。
・日陰に入れば、色が黒いのは暑さに有利である。
・白色は熱を反射する反面、黒色より放熱は少ない。
・熱帯地方の人類は暑さに対応出来るように進化して黒い皮膚となったようである。
・北極に棲む白熊や雪の中に棲む雪ウサギも体温を守るために進化して白くなった。。
・シベリアに棲み、冬には北海道や東北に飛来する白鳥は白で、
・暑い地域を住処に渡るツバメは体温を放熱しやすくために黒色に進化した。
・人間も直射日光を遮るためには白の服装で外出し、屋内での暑さ対策には黒のシャツに着替えた方が涼しいということになる。
・カラスは夏よりも、冬の寒さの方が大変らしい。
・冷蔵庫裏面にある放熱板・放熱コイル、クーラー室外機の放熱コイル等も放熱しやすい黒色になっている。
・保温ポット(魔法瓶)の外観は放熱の少ない白が昔は基本であった。
では、黒体放射(黒体輻射)とはいかなる物理現象を言うのであろうか。
・黒体放射とは、気体、液体または固体を構成する原子、分子、イオンまたは電子は、熱平衡状態においては、その温度に対応したボルツマン分布に従う熱エネルギーで運動をしている。この熱運動によって、荷電粒子から電磁波が放射されるが、このような放射を出す過程または出された放射のことを熱放射(黒体放射)という。
・熱放射はどんな物体でも起こる本質的な現象だが、その強度は、物質の種類や表面状態に依存する。
・熱放射と熱吸収とは相関関係があり、同じ割合でおこる。すなわち、熱放射しやすい物体はそれと同程度に熱吸収しやすく(キルヒホフの法則)、熱放射と熱吸収の割合である放射率と吸収率は、
放射率=吸収率
の関係がある。
放射率が“1”である理想物体が「黒体」であり、黒体の吸収率は“1”である。
・日向に置いた黒い布は太陽熱を吸収しやすいと同時に熱放射もしやすい。つまり、熱しやすく冷めやすい。
カラスの黒い羽根はこの原理で、有効に働いていると言える。
上の最後の2行が、「黒いカラスはなぜ熱中症にはならないのか」に対する答えである。