ハゲワシのスカベンジャー(腐肉食動物)の腐敗肉に対する防衛能力とは?
NETFLIXで「アニマル・自然界の実力者・、猛禽類」を見ていて、死肉に群がるハゲワシは人間から嫌われていると言っても過言ではないが、彼らは、唯一他の動物を殺戮しない猛禽類である。ハゲワシは自然界の掃除屋さんで生命のサイクルの中で重要な役割を果たしているということである。
死肉といっても、腐敗が進んだ肉を食べれば細菌や毒素などがいっぱいで体に悪くないのか不思議でならない。
ハイエナは、死体が新鮮なうちに食べるようにしているらしい。また、オオカミやキツネなどは、病に感染している「食べてはいけない肉(感染体)」か、それとも「安全な肉」かを判断できるということである。
スカベンジャー(腐肉食動物)のハゲワシは毒素に接触するたびに、免疫システムが新たな抗体を作り、毒素に対する耐性を増強していることが最近分かってきた。しかし、初めて毒素にさらされるときに、どれほどの影響を受けるのかは、はっきりと解明されていない。
ハイエナやライオンの場合は、お互いに身繕いをしたり、一緒に食事をしたりしながら、病原菌を少量ずつ与え合い、炭疽菌のような毒素に対するグループ全体の免疫力を高めている可能性がありらしい。
死肉は匂いが強く遠くからでもその匂いを嗅ぎ分けることができる上に、腐敗が進むと分解されて肉も柔らかくなるので食べやすいのである。
世界の23種のハゲワシ達は特殊な内臓を発達させ、驚くべき消化器系の助けを借りて、死肉だけを食べているのである。
動物の胃液には、食物が入ってくると胃酸や酵素を含み、食物を分解して消化・吸収を助けている。この胃酸の濃度は、ヒトの胃液の平均的なレベルはpH1から2の間で、酢が2.4で、車のバッテリーの酸が0.8である。然るに、ハゲワシの場合、胃酸のpHは0から1の間で、これは、金属を溶かすことができるほど酸性度が高いのであるが、腐肉を消化するためにこれほどの酸性度を持っているわけではない。
ハゲワシの超強力な胃酸は、腐肉に存在する病原体全体を殺すことで、サルモネラ菌やコレラ菌、または炭疽症、ボツリヌス中毒症、狂犬病などの原因となる病原菌から身を守っているのである。しかし、それだけではなく、自分の脚に直接糞をし、排泄物を蒸発させることによって暑い日には放熱をしているし、同時に、広範囲に撒き散らされた強力な酸を含む糞尿は、腐敗物のなかに膝までつかった脚に対して消毒剤としての役割を果たしている。更には、腐肉周辺の牧草の病原菌を殺菌することによって、ほかの動物や土壌や水等の生態系に病気が蔓延することを防いでいるということである。
この様にハゲワシ達は、自分の身を細菌やウィルスから守るだけではなく、自然界の中で、清掃と同時に消毒までもしているのである。
ハゲワシといわれるように頭が醜く剥げているので、この風貌も又人間に厭われる一因である。しかし、この禿も又、ハゲワシにとってはメリットがある。腐肉の中に頭を突っ込んで細菌やウィルが羽毛に絡みついて取れなくなるような事態を避けることができるのである。
ハゲワシの生態には無駄がない。しかし、そんなハゲワシにも敵わないものがある。それは人間が作り出した化学薬品であり、環境破壊である。森林破壊に住処を追われ、人間社会に近づき薬品に汚染された動物の死体を食べて亡くなったハゲワシは数知れないと言われている。