例によって息子のお買い物に付いて行く。信号待ちで私は車の助手席に座って外をきょろきょろしていると、ビルの最上階に絵が描いてある。あんな上にどうして描いたのかと思ったが、よく見ると缶スプレーでかいた落がきである。


7階建てのマンションの側壁に落書きをしている。落書きは現場を抑えられると警察へ通報されて捕まることもある。逃げる準備をしながら缶スプレーで素早く書かねばならないから、どうしても一筆書きのようになる。


2階と3階と屋上の8階に描かれているのも謎である。


1階には描かれていない。よく見ると、窓ではなくて階段室の上側に白の塗料で落書をしている。あんな高い手すりに乗ってスプレーで落書きするのは怖くないのだろうか。それに人が住んでいるような気配もないようにも感じられるのに、かなり急いで描いたようである。大通りから丸見えであるからか。


信号が変わろうとした時にちらっと見えたのが、右側のネットである。きっとここは足場を組んで外壁塗装をしていたので、上の階に行くことができたのだろうか。屋上に行く階段室にも足場が組んであるか広告の看板を止める鉄骨が組まれていたのではないか。2階と3階を書いていて、同じことなら最上階に絵を描いてさっさと逃げようとしたのではないか。それにしても塗り直した壁に落書きをするとは、ヒドイ。しかし、このビルは古く見えた。大通り側の車道からはよく見えないのでこのビルの事情がよく分からないが、落書きするのに選ばれたことは確かである。一体どのような基準で絵を描く壁を選ぶのであろうか。自分のことをストリートアーティストと思っているのだろうか。若いころ、一度壁面に絵を描いたことがあるが、何しろ屋外だったので人も通るし落ち着かなかった。ストリートアートというのは、気力と体力と度胸を必要とするアートである。落書きをされた建物の管理者は、この落書をアートだとは全く思っておらず、迷惑な犯罪だと思っているのも確かである。

バンクシーぐらいになっても、犯罪を犯しているという立場から描く姿を見られないようにして、現在に至っている。彼の場合は、ストリートアートというより、コンセプトアートである。主義主張の内容の方が大切で、そのことが終始一貫している。今は危険も顧みずウクライナで制作をしている。