まず、5月10日がごぼうの日だという理由は、「5(ご)1(棒)0(お)」というこじつけらしい。1年中見かけるゴボウは11〜2月頃が旬で、春が旬ではないが、貯蔵性に優れているため、一年中流通している。

しかし、新ごぼうと呼ばれる春(4月~6月)に収穫されるごぼうはやや細めで柔らかい。ごぼうの日はこの春ごぼうを食べる日なのか。

【ごぼうの食文化】
ごぼうを食することは、日本独特の食文化である。
原産地は西アジアから地中海沿岸にかけてで、日本への渡来は、平安時代、薬用として使われていた中国からという説がある。
ごぼうを食用とすることに抵抗がなかったのは、それ以前に、キク科アザミ属の「モリアザミ」は「山ゴボウ」とも呼ばれ、古くから根も食べられてきたからだという説もある。
ごぼうを食するのは世界中で日本と韓国ぐらいだという話で、積極的に料理に取り入れているのは日本だけである。
ごぼうを食べる習慣のない人にとってごぼうは木でしかないらしく、太平洋戦争で日本の捕虜になった外国人にごぼうを食べさせたら、後日、虐待だと言われたという。

【ごぼうの名の歴史】
日本の文献に初めてゴボウの記述があったのは、平安時代の漢和字書『新撰字鏡』においてである。「木」の部に「悪實 支太支須乃弥」とあり、「悪實(悪実。あくみ)」は、ゴボウの種子のことで、また「支太支須(きたきす)」はゴボウの古名である。
ごぼうの漢字、「牛蒡」の字については、延喜年間(901-923)に成立した本草書『本草和名』の第九巻「草中」に「悪實 一名牛蒡、和名岐多伊須」とある。又、「牛蒡」は、ゴボウのひげ根が牛の尾に似ており、それに草の名前の「蒡」がついてできたといわれる。

【ごぼうのあく抜き】
ごぼうのえぐみや変色を抑えるためのあく抜きは、30秒~1分程度に抑え、さらしすぎないようにしなければ、水溶性のポリフェノールが水に流れて行ってしまう。むしろ、揚げ物や濃い色の煮つけなら、あく抜きは不要である。

【ごぼう料理の多さ】
きんぴら、煮つけ、ごぼうのたたき、てんぷら、ごぼてん、酢の物、炊き込みご飯、炒め物、サラダ、ごぼうチップなど、何百とある。要するにほとんどの料理の素材として使えるという事である。

【ごぼうの栄養素】
・ごぼうは野菜の中でも珍しく両種(水溶性食物繊維と不溶性食物繊維)の食物繊維を含んでいるため、腸内環境の改善によい。
・血糖値の上昇を防ぐ・整腸作用のある水溶性食物繊維の「イヌリン」
・腸内で有害物質を吸着し、体外へ排出してくれる働きのある不溶性食物繊維の「リグニン」
・クロロゲン酸はポリフェノールの一種で、ごぼうのアクの成分で、抗酸化作用がある。
・カリウムは余分なナトリウムを排出する働きがあり、ナトリウム(塩分)の摂りすぎが原因となる高血圧を防ぐ。
・骨を丈夫にする「カルシウム」
・貧血対策に欠かせない「鉄」
・その他に、マグネシウム、亜鉛、アルギニン、たんぱく質などを含む。

ごぼうを炒めた味が肉の味に似ているというので、肉を食べられなかった時代はごぼうは肉の代用品であったと聞いたことがある。きんぴらごぼうはまさに肉料理の代用品であったらしい。なにはなくとも、ごぼうである。