一筆竜を描こうと思って、NETで墨汁を検索していたら、「絵墨(えずみ)」という皿絵の具を見つけたので墨汁を買うついでにポチッタ。


「墨をベースに作られた新しい色彩の世界」というキャッチフレーズが書かれているので、墨の渋い良さを生かした顔彩だと思って、これは良いと買ってしまったのである。画材の衝動買いは、年の数より多いような気がする。


芸大では、日本画を専攻していたので、皿絵の具はよく使っていた。昔の皿絵の具は顔料を固めるのに砂糖を使っていたので、長期間放置して次に使おうと思って箱を開けると、虫に食われた跡が無数に走っていることがあったという。今はそのようなことを聞かないので砂糖の代わりにアラビアゴムを使っているのだろう。アラビアゴムは切手の裏に使われている接着剤で水に容易に溶ける。

墨を使ってあるのでこの絵墨は膠で固めてあると思っている人もあるかもしれないけれど、それは大きな思い違いである。膠で固めるとカチンコチンになって容易には水では溶けない。膠はゼラチンをもっと硬くしたようなものである。


絵墨とはどんな具合なのかと思って、試しに塗ってみた。右端は墨である。
この試し塗りの時がいつもワクワクする。


顔料の粒子が墨に比べるとかなり荒いように見える。


右側の墨の粒子は細かいが、左の絵墨の粒子はそれに比べると荒いので均一に塗るにはパレット上でよく撹拌しなければならない。塗りむらは絵の具の濃淡や水のたまりを作ると容易く作れるが、難しいのは絵の具の均一な伸びである。そういう意味では墨は超一流の絵の具ともいえる。墨に七彩ありといわれることを考えるとわざわざ顔料と墨の粉を混ぜる必要があるのかとも思う。


やはり水彩顔料絵の具は何十年も使っているペリカンの絵の具が一番使いやすい。


発色もいいし粒子も細かい。個別で色を足していくこともできる。金色銀色もある。


水彩絵の具で混色すれば同じようなグレイッシュな色はすぐ作れると分かっているのに、新しい絵の具が出ると一度は買って見ないと気が済まない。こんな風にして私の絵の具棚は使いもしない絵の具で埋まっている。絵描きが亡くなるとその家族は生前の作品と画材の始末に頭を悩ますそうである。今では、パソコン上でソフトを使って絵を描く人が多くなってきたのでそんな心配もなくなってくる傾向にある。

絵の具を使ったことがないイラストレーターも多い。AI絵師を名乗る前に、一度は本物の絵の具で遊んでみるのもいいかもしれない。そうすれば紙に絵の具で描かれた本物の原画ができる。