毎年、1月の2日から描き始める私の描き初めは、文字ではなく絵である。
能登半島がお正月に震えた。その震えは大阪にまで伝わってきた。
それ以降、お正月であっても「おめでとう」とは言えなくなってしまった。
その思いを描き初めにした。
日本海に突き出た能登半島が一瞬にして形が変わるほどの地震が襲った。

能登の世界を絵に描く時、これは墨以外では表現できない。
白黒の世界。海岸を襲った津波だけではなく地盤の隆起で、場所によっては4メートルの岸壁がせりあがった。
地球が震えたのだ。その恐ろしい震えの前では人間は無力であった。

多くの被災者を出したが、残った人たちはこの先もずっと生きなければならない。
大きな断層が起こった人生を生き続けなければならない。人生のタカラは思い出。
日本海からの湿った風は、能登半島に雪を降らせ、被災風景も記憶も覆い隠してゆく。
破壊された黒い瓦屋根を雪が真っ白に塗り替えた。
その白い風景は、雪が解けると再び姿を現す。覚めない悪夢を繰り返す。
過疎の被災地の完全復興は難しいと言われる。それでも、諦めない人たちはいる。そんな人たちを応援したい。