マーブリングや墨流しは人の技巧が余り見えない自然な造形によって作り出されるところが気に入っている。
人の技巧は見えないが、その技術は、かけた時間と比例するぐらい修練のたまものである。

日本の扇は120度以下の角度で切り取られた扇形からできている。
この末広がりの形に切り取られた絵具の流れが作り出す動きは、他の物に比較できない美しい造形美を創り出している。

島の間を縫うようにして流れる水の動きは扇形であるからこそ、その流体の美しさを100%表現できるのである。

これが四角い画面で切り取られていたならば、色の流れは閉じ込められて広がりはしないのである。

扇のもう一つの特徴はその扇骨が作り出す直線である。上の扇に見られるようにマーブリングの曲線の構図の上に置かれた直線の形は、扇の黒い直線と危うい調和を創り出す。これが四角い額で切り取られた窓のような形の中に収めると直線の構図は、不調和音を奏でるに違いない。
マーブリングや墨流しは、日本の扇の上に置かれてこそ、その流れが滞ることなくいつまでも動き続けるのである。