桜の名所に行くと、ほとんどどこでも枝垂桜(しだれざくら)があって、その桜の木の前で記念撮影している光景がよく見受けられる。大きな傘を差したように枝が無数に垂れ下がっていて、その枝に桜の花が密集して咲くのである。枝垂桜は桜の木の女王である。


一時期、毎年のように春になると桜模様の扇を描いていた。
桜の舞扇をいっぱい作ってあるので、あれこれ組み合わせて画像を撮って、その画像をもとにしてソフトで加工して枝垂桜の抽象画像を作る。

まだうすら寒いころは、堅い蕾の枝ばかりが目立って大きな蜘蛛の巣のようである。


温かさと共に、蕾が一斉にほころび始める。


それでもまだ枝があちこちに見られる。


その内、桜の花が咲き乱れてくる。


枝垂桜が満開になると、これぞ桜という趣を見せる。

近頃ではこの枝垂桜を夜もタイトアップしているところが多い。
夜桜の怪しげな雰囲気は、能舞台を思い出させる。


ところが無情な雨が降って桜を散らす。
雨に濡れそぼった枝垂桜もそれはそれで趣がある。

花の命は短くて・・・


雨が降ったり、無情な風が吹いたりして、桜の花びらがはらはら散り始めるころ、枝のあちこちで葉の若芽が出始める。

枝垂桜はもうすぐ葉桜になって桜の香りをまき散らすのだろう。
桜の香りは、葉の付け根にある花外蜜腺という小さな丸い透明の粒に含まれるクマリンという成分である。

桜のお花見と桜あんと桜茶は、日本の春を象徴する風物である。