温かくなると、木々の中から樹の妖精というか妖怪たちが顔を出しあたりの様子をうかがうのである。注意して樹の太い幹をよく見ればそれらの妖怪の顔がはっきりわかる。耳を澄ますと彼らの低いうなり声も聞こえてくる。

この犬に似た妖怪は未だ部分的にしか顔を出していない。

この妖怪の顔が余りに大きいので、もう少しで見逃すところであった。

空色の目をしたこの妖怪は、首が長くて、あたりをきょろきょろ見回して、去年の秋に切られた仲間を探しているのだ。

青桐の大木に潜んでいたこの怪獣さんは怖がりで、一刻も早く木々の葉っぱが生えないかと、焦っている。
夏になって木々の葉が茂ってくると妖怪たちの顔は葉に隠されるので秋までは安心できるのである。

大きな顔のこの樹の妖怪は強い風が吹くと、風雨の音に紛れて自分も大声でわめくのが大好きである。今は口をへの字に閉じているが、この口が大きく開かれると圧倒される。
春先で、まだ葉がそんなに多くないこの時期には、木々の太い幹に妖怪さんたちが息をひそめて行きかう人間たちを眺めたり観察しているのである。道を歩いていて妙な視線を感じることがあれば、たいがいは樹の妖怪たちの視線なのである。